施工管理は建設現場を統括し、管理を行う立場で、工事の種別を問わず、すべての工事現場に必須の仕事となります。そのなかでも建築施工管理は建築現場が専門です。工程、原価、品質、安全の4大管理を担い、現場全体を管理するため、働くうえで必要なスキルや能力が存在します。今回は、建築施工管理の仕事内容を踏まえ、建築施工管理になる方法、求められるスキルと能力について解説します。
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■建築施工管理とはどのような仕事?
建築施工管理の概要、具体的な仕事内容について見ていきましょう。
◇建築施工管理とは?
そもそも施工管理とは、建設現場を統括的に管理する仕事です。建築施工管理は建築工事を専門とするため、ビルや住宅、工場など、建築物の現場を担当します。
建築施工管理は現場の責任者として、施工計画どおりに工事が進むよう、工事全体を管理します。工事の進捗状況に応じた工期の調整、作業員の指導監督、発注者との打ち合わせ、協力会社や取引先との折衝なども、建築施工管理の仕事です。
また、事故なく工事を終えること、予算内で工事を完成させて利益を確保することも、建築施工管理の重要な職務です。
◇建築施工管理の具体的な仕事内容
建築施工管理は現場を統括的に管理するため、「現場管理」と言い換えることもできます。基本的な仕事内容は、工程、原価、品質、安全の4大管理で、建築施工管理の具体的な仕事内容は次のとおりです。
・施工計画の策定
建築施工管理の仕事は、施工計画の策定からはじまります。施工計画とは、建設工事を仕様書や設計図書どおりに、かつ決められた予算内で安全に工事を行う工法を計画することです。施工計画を策定するにあたって、以下のような項目を検討します。
□ 建設工事の目的、工事内容、契約条件などの把握
□ 地形や気象などの現場条件の把握
□ 基本工程
□ 施工方法
□ 指定機械
□ 主要資材
□ 施工管理計画
□ 緊急時の体制、対応
□ 環境対策
□ 仮設備の選択、配置
□ 資材の再利用、再資源化
□ 建設副産物の処理方法、廃棄物の運搬場所
施工性、経済性、安全性も含めて検討を行い、最適な施工計画を立案する必要があります。
・工程管理
工程管理とは、決められた工期で工事を完成させるため、工事のスケジュールを調整、管理するのが業務です。工期内に工事を終わらせることは、資材や機材のコスト削減、人員配置の円滑化、顧客からの信頼獲得につながります。工程管理は建築施工管理で最も重要な仕事であり、原価管理、品質管理、安全管理のすべてに通じます。
実際の工程管理業務は、全体、月間、週間の工程表を作成し、進捗状況を確認しながら作業員の人員や重機の手配を調整します。進捗に遅れが生じた場合、遅れを取り戻すために必要な対策を講じることも工程管理の仕事です。
・原価管理
原価管理とは、人件費、材料費、重機などの原価を計算し、予算内に収める仕事です。
施工計画をもとに算出する実行予算と、実際の経費が乖離しないように予算を管理する必要があります。建築施工管理者は実行予算をオーバーしないように予算を管理し、利益を残すことが最終的な目的です。
また、工期の進捗が遅れると、人件費や機材のコストが増加します。進捗の遅れを取り戻すには人員数や機材を調整する必要があるため、工程管理も含めた原価管理が必要です。
・品質管理
品質管理では、仕様書や設計図書の品質や強度を満たしているか、材料の寸法や規格を確認します。評価対象ごとに試験を実施し、品質を確認することも品質管理業務です。また、完成した建物の強度、耐震性、密度、仕上げなど、規定を満たしているかどうかも確認します。
・安全管理
建設現場は危険と隣り合わせのため、事故を未然に防ぎ、作業員の安全を確保する安全管理も必要な仕事です。
安全管理では、作業環境をチェックし、安全を確保する取り組みを実施します。具体的な安全対策は、手すりや消火器などの設備、ヒヤリハットなどの安全教育、作業員の健康管理などが挙げられます。
・各管理に対する事務作業
建築施工管理者は現場の巡回や指示に加え、事務所でのデスクワークも含まれます。工程表、日報、安全確認の書類、翌日の指示書、写真の整理など、さまざまな事務作業に対応する必要があります。
◇建築施工管理と土木施工管理の違い
建築とは、住宅やビルなどの建築物を、新築、増築、改築、移転することです。建築工事は、地面の上に上物の建築物をつくることが基本です。
一方、土木は橋や道路、鉄道、ダム、宅地造成など、建築物以外の構造物をつくることです。土木工事は基礎工事、造成工事、外構工事に分類され、地面の上だけでなく、地下で行うこともあります。
土木施工管理が担当する4大管理業務は、建築施工管理と内容は変わりません。しかし、建築工事と土木工事で施工内容が異なるため、品質管理の対象が変わります。
土木工事の品質管理では、コンクリートや鉄筋に加え、地下の工事に関係する土や水の管理も必要です。一方、建築工事では木造建築の施工管理、仕上げの塗装や壁紙など、細かい部分も施工管理する点が異なります。
■建築施工管理技士になるには?
建築施工管理者は資格が必須という仕事ではなく、無資格でもできる仕事です。ただし、建築工事の施工管理者として働くにあたっては、建築施工管理技士資格の取得が望まれます。施工管理技士は、現場に配置する義務がある監理技術者、主任技術者の資格要件であるためです。
監理技術者とは、元請の特定建設業者が、下請契約として締結した請負代金が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上) の現場に配置する技術者のことです。一方、主任技術者は監理技術者の配置が必要ない現場で、請負代金、元請と下請を問わず、すべての建設現場に配置する技術者のことです。
◇施工管理技士資格を取得するには?
施工管理は人手不足ということもあって、未経験者でも建築施工管理で採用するケースが増えています。しかし、建築施工管理技士資格の取得が業務上望ましいため、資格を取得したほうがより就職しやすくなります。
なお、建築施工管理技士資格には1級と2級があり、2級建築施工管理技士は建築施工管理技士の登竜門的な位置づけです。2級建築施工管理技士は第一次検定と第二次検定があり、第一次検定は17歳以上なら誰でも受検できます。
建築施工管理技士資格の第一次検定に合格すると得られるのが、建築施工管理技士補の資格です。2級建築施工管理技士補を取得し、かつ建築施工管理技士の能力開発研修である、「CPD(技術者の継続的な専門教育)」の単位の取得で経営事項審査の加点対象になります。企業側は2級施工管理技士補を雇用するメリットがあるため、2級施工管理技士補は早めに取得するとよいでしょう。
なお、2級建築施工管理技士の第一次検定は受検資格がないことから、受験者の年齢層は30歳以下が半数を占めています。第二次検定は実務経験年数が必要になるため、2級建築施工管理技士合格者の平均年齢は約33歳と高くなります。
一方、1級建築施工管理技士の場合、30歳超の受検者が圧倒的に多い状況です。1級建築施工管理技士合格者の平均年齢は、2015年時点で37.8歳となっています。
つまり、建築施工管理として働きながら、30歳を超えてから本格的に建築施工管理技士を取得していることがわかります。建築施工管理は資格がなくても働けるため、若年層など年齢を問わずチャレンジできる仕事といえるでしょう。
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■建築施工管理に必要なスキルや能力
建築施工管理技士資格のほかに、建築施工管理者が備えておきたいスキル、能力について解説します。
◇コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、建築施工管理者に不可欠の能力です。
現場の作業員、会社、発注者、専門工事業者、行政など、多くの関係者が建設工事にかかわっています。建築施工管理者は関係者と打ち合わせを行う機会が多く、関係者との調整も重要な仕事です。
すべての関係者をまとめあげ、事故なく工事を完成させるには、密なコミュニケーションが必要です。また、気難しい作業員とも付き合う必要があり、日頃のコミュニケーションで信頼関係を築くことも重要になります。
ただし、コミュニケーション能力に自信がない方でも、建築施工管理として活躍できる可能性は十分あります。建築施工管理として経験を積むことで、徐々にコミュニケーションがとれるようになるためです。
◇段取りのスキル
現場管理において、効率よくスムーズに工事が進めるには、段取りのスキルが必須です。建設業界では段取りが万全であれば仕事の8割が完了しているという、「段取り八分」という概念があります。残りの2割は、想定外のトラブルをどう乗り越えるかを意味します。
数多くの人が工事に携わるため、実際に段取りが悪いと工期が遅れる原因になりかねません。例えば、必要な資材がそろっていない、職人のスケジュール調整に失敗する、作業場所が片付いていないなど、段取りの悪さは作業に悪影響をおよぼします。
さらに、想定外のトラブルが起きた場合は、冷静に対応し、臨機応変にスケジュールを変更しなければなりません。
段取りのスキルを身につけるには、一歩先の状況を常に予測し、かつ仕事のやり方を変えられる柔軟性が必要です。また、仕事の優先順位を決め、仕事に追われない状態を作ることも段取り力の向上に役立ちます。
◇危機管理能力
予期せぬトラブルに対応するには、段取りに加えて危機管理能力も必要です。どの建設現場であっても、予想しないトラブルが発生することは珍しくありません。
起こり得るトラブルを想定し、回避策を考えておくことが建築施工管理者に求められます。さらに、目に見えない危険を予測し、事故の原因を摘み取っておくことも必要です。
◇経理のスキル
建築施工管理は原価管理が仕事のため、経理のスキルも身につけておくとよいでしょう。
原価管理で紹介したように、実行予算に対して原価を細かく管理し、利益を残さなければなりません。予算内に費用を収め、会社の利益を追求する認識を高めましょう。
■まとめ
建築施工管理は建築現場を専門とする施工管理であり、工程、原価、品質、安全の4大管理に携わります。建設現場は数多くの関係者がいるため、建築施工管理者は現場を統括的に管理しなければなりません。
さらに、建築施工管理はコミュニケーション能力、段取り力など、さまざまな能力やスキルが求められます。ただし、コミュニケーション能力に自信がない場合でも、仕事をとおして能力が身につくので過度な心配は必要ありません。
建築施工管理は資格がなくても働けるため、年齢層を問わず挑戦できる仕事です。これから建築施工管理で働きたい方で、不安や不明点がある方は、現キャリのキャリアアドバイザーにご相談ください。