積算業務とは、建設工事にかかる費用を事前に算出する仕事です。数千万~億単位の金額が動く建設業において、積算業務は重要な役割を果たします。しかし、積算は建設業界の独自の仕事のため、積算業務がどのような仕事なのかイメージしにくいかもしれません。今回は、積算業務の具体的な仕事内容とやりがい、必要な資格とスキルについて解説します。
■積算業務
積算業務の基礎知識と、1日の仕事の流れを見ていきましょう。
◇積算とは
積算は建設工事の費用を算出することで、おおまかに分けると以下の3種類があります。
・人材や材料費、工事費の算出
工事に必要な材料や、作業員の人件費など、総合的な工事費を算出する業務です。材料費を積算する際は設計図書や仕様書を確認し、必要な材料の数量を算出します。人件費では、工事に必要な人員数を賃金相場から算出します。
また、設計図書や仕様書を読み解いたうえで、仮設工事費や作業に必要な電気代など、すべての諸経費を洗い出すことも積算業務の1つです。
・金額の設定
ここでいう金額とは、建設工事で得る利益のことです。積算業務の担当者がお金の管理を一括しておこなうことで、より確実な金額を設定できます。
・価格交渉
材料を扱う業者や設備工事を請け負う業者と価格交渉し、より多くの利益を残すことも重要な積算業務です。工事に関わるお金を動かすため、お互いが利益を得られるように交渉をおこなう必要があります。
◇積算業務の1日の流れ
積算業務に携わった場合、1日の仕事は以下のようなスケジュールでおこなっています。
・8時:出社…事務所の清掃や当日の業務内容を確認
・8時10分:朝会議…今日の仕事内容や予定、昨日の進捗状況や確認事項を報告
・~12時:日常業務…各業者からのメール対応、稼働中の現場の打ち合わせ、設計業務など
・13~17時:積算業務…稼働中の物件や、入札期限前の積算業務(メーカーの説明会や勉強会に行くこともあり)
・17~18時:まとめ…メール対応、日報の記入、入札案件チェックなど
このように、積算業務は計算だけでなく、現場との打ち合わせやメール対応も業務に含まれます。
◇積算は激務って本当?
積算業務は定時で退社できることが一般的ですが、状況によっては激務になります。抱えている案件の数が多いときや年度末の繁忙期などは、残業や休日出勤で対応することもあるようです。
ただし、建設業界の働き方改革の推進で、業務時間が短くなっていることに加え、現場によって忙しさが異なります。激務になったとしても一時期のことなので、積算業務はワークライフバランスが整っているといえるでしょう。
■積算業務のやりがいや魅力的なところ
積算業務の仕事のやりがいと、仕事上で魅力的に感じる部分は、以下のことが挙げられます。
◇費用をいかに抑え、利益を出していくのか考える
工事の費用を最大限に抑え、どれくらい利益を出せるかを考えることは積算業務の面白さでしょう。施主の要望を取り入れることも大切ですが、聞き入れるばかりでは予算をオーバーすることも珍しくありません。積算業務で詳細な費用を算出することで、必要なものと不要なものを明確にし、最低限の予算内で利益を残すことは大きなやりがいとなるでしょう。
◇会社にとっての重要な役割を担うポジション
適切な積算をおこなうことで、工事を受注できるかを判断する目安となります。受注数は会社の存続に関わるため、積算業務は重要な役割を担うポジションです。
また、費用の積算ミスや、予算と見積もりが合わないなど、小さなミスが大きな金額のズレにつながります。建設工事全体に関わる責任の重さはありますが、難しい仕事を完遂できたときの喜びはひとしおでしょう。
◇歴史に残るような建物に携われるところ
建設業界全般にいえることですが、携わった建物が後世に残ることは大きな魅力です。建設現場に赴くことは少ないですが、建設過程の一役を担うことは積算業務に携わるうえでモチベーションにつながるでしょう。
■積算業務に必要なスキルや資格は?
数字を操る積算業務に就く場合、以下のスキルや資格があると仕事に役立ちます。
◇業務に必要なスキル
積算業務に直結するスキルは、以下のものが挙げられます。積算業務に興味がある方や、建築業界でキャリアアップしたい方は事前に確認しておきましょう。
・計算力
積算業務において、もっとも計算が必要なシーンは材料費の算出です。
たとえば、内装の材料費では部屋ごとの床面積と壁面積、外装では外壁の面積や屋根面積など、さまざまな部分を使って計算します。内装で使う壁紙は金額が種類で異なるうえに、下地材や金物など部材の計算など、積算の計算はすべての状況を把握しなければなりません。連続で計算することが求められるため、根気強く計算できる力は必要不可欠です。
・豊富な知識
積算業務をおこなうにあたり、材料の種類や仕様、設計図書や仕様書を読み解く、建設の工法や工事過程といった知識が必要です。
たとえば、安い材料を使うと費用が抑えられると思ったところ、仕様が変わったことで工期のズレが発生するケースがあります。利益を出すために安さだけを追い求めると、実際の建設現場で余計な工程や不具合が発生しかねません。つまり、積算業務を適切におこなうためには、設計から工事まで、豊富な知識が求められるのです。
・コミュニケーション能力
積算業務は建設に関係する人々と、密にコミュニケーションを取りながら業務をおこないます。業者との単価の交渉はもちろん、材料の特定が難しい場合や不明点などは設計者に確認することもあります。自らが積極的にコミュニケーションを取れることは、積算業務の重要な要素といえるでしょう。
◇建築積算士が役立つ!
建築積算士とは、材料費や工事費の積算業務における、高度な技術を持つスペシャリストとして認められる資格です。この資格を取得すると年収アップが期待できるうえに、さらに条件のいい会社に転職しやすくなります。また、公共工事の入札基準の条件になっており、企業側にもメリットがあります。
建築積算士試験は、四肢択一式の一次試験、短文記述と実技試験が出題される二次試験に、それぞれ合格する必要があります。実技試験では鉄骨や躯体などの費用と内訳明細を作成するという実践的な内容です。
近年の合格率は50~60%を推移しており、難易度はそれほど高くないといえます。しかし、実技試験の積算は実務よりも計算の正確性を求められるため、難易度の高い試験といわれています。
■まとめ
積算は建設業界独自の業務で、工事費用を算出する重要な役割を持ちます。予算を抑えながら利益を確保するため、材料の選定や計算、工事に必要な人件費の計算など、あらゆる側面で工事費用を算出します。そのため、算出するための基礎知識はもちろん、設計図書を読み解くスキル、材料の知識、建設の工法や過程などの豊富な知識が必要です。積算業務は難しい仕事だからこそ、予算内で工事を終えること、地図に残る建物に携われることは、大きなやりがいとなるでしょう。
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