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一級建築士と二級建築士の違いは?難易度・合格率、試験突破のポイントを解説

一級建築士と二級建築士の違いは?難易度・合格率、試験突破のポイントを解説

ビルや住宅、病院や公共建築などの設計をしたり、工事の管理を行う「建築士」は国家資格であり、一級建築士、二級建築士に分かれています。両者は扱える建物や受験資格に違いがあります。この記事では2つの資格の難易度や合格率、勉強時間の違いなどを紹介します。

一級建築士と二級建築士の資格の違い

最初に一級建築士と二級建築士の違いについて解説します。この2つの資格では設計できる建築物の規模に違いがあるほか、免許の交付元なども異なります。
まず、扱える建物について見ていきましょう。

◇設計できる建築物の違い

一級建築士と二級建築士それぞれが設計できる建物を表で整理しました。
下の表を見ると、一級建築士は制限なく、すべての建物をカバーできる一方、二級建築士は戸建住宅などの小規模な建物の設計に限定されていることがわかります。

病院や劇場、共同住宅、旅館、工場といった建物は「特殊建築物(通称:特建)」に分類されます。これらの建物は不特定多数の人が利用したり、衛生・防火上の厳しい規制があり、一級建築士しか扱えません。

また、鉄筋コンクリート・鉄骨造などで高さが13mかつ軒高9m以下、300㎡を超える建造物の場合も、一級建築士しか扱えないことになっています。

延べ面積 木造建造物 鉄筋コンクリート造、鉄骨造等 すべての構造
高さが13mかつ
軒高9m以下のもの
 
高さが13mかつ
軒高9m以下のもの
 
高さが13mまたは
軒高9mを超えるもの
平屋 2階建て 3階建て以上 2階建て
以下
3階建て
以上
一級建築士
30㎡以下 誰でもできる 一級建築士または二級建築士 誰でもできる 一級建築士
または
二級建築士
30㎡を超え
100㎡以下
一級建築士または
二級建築士
100㎡を超え
300㎡以下
一級・二級
または
木造建築士
300㎡を超え
500㎡以下
一級建築士
または
二級建築士
一級建築士
500㎡を超え1000㎡以下 一般
特建 一級建築士 一級建築士
1000㎡を
超えるもの
一般 一級建築士または二級建築士
特建 一級建築士

表の中の「木造建築士」とは、木造建造物の設計に限定された資格です。木造建築に関しては高い専門性が問われる資格であり、取得の難易度が低いというわけではありません。
一般の戸建てなど規模の小さな木造建築は、一級・二級建築士と同様設計することができます。

一級建築士と二級建築士を同時に受験することも可能ですが、出題範囲も異なり難易度が高いので、どちらかに絞って勉強することをおすすめします。

建築士と設計士の違いについて詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。
「建築設計士とは?建築士と設計士の違いと仕事内容を解説!」

◇平均年収の違い

一級建築士と二級建築士の平均年収について見ていきましょう。
実は二級建築士の平均年収については公式なデータがないため、一級建築士との差を類推していきます。

まず比較の参考として、一級建築士と二級建築士の登録人数を比較してみます。
国土交通省が発表している「建築士登録人数」によれば、一級建築士は約37万5,000人、二級建築士は78万5,000人です(令和4年)。その人数は約2倍の差があり、一級建築士のほうが二級建築士よりも難易度が高いことがうかがわれます。

一級建築士の平均年収は約702万円(厚生労働省)であり、国税庁が発表している建設業全体の平均年収約475万円よりも200万円以上高い金額となっています。
この差をそのまま一級建築士と二級建築士の平均年収の差と見ることはできませんが、前述した登録者人数の差を考えると、一級建築士と二級建築士の平均年収には、同程度の開きがある可能性は高いといえるでしょう。

一級建築士と二級建築士の試験の違い

次に一級建築士と二級建築士の試験の違いについて、合格率・試験範囲・受験資格で比較し、解説します。

◇合格率の違い

令和5年度の合格率で比較すると、一級建築士は9.9%、二級建築士は22.3%と大きな差があります。

  科目 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年
一級建築士 学科 22.8% 20.7% 15.2% 21.0% 16.2%
製図 35.2% 34.4% 35.9% 33.0% 33.2%
総合 12.0% 10.6% 9.9% 9.9% 9.9%
二級建築士 学科 42.0% 41.4% 41.9% 42.8% 35.0%
製図 46.3% 53.1% 48.6% 52.5% 49.9%
総合 22.2% 26.4% 23.6% 25.0% 22.3%

上記の5回の合格率平均を算出すると、一級建築士は10.5%、二級建築士は23.9%です。
合格率で見ると、一級建築士は医師、弁護士資格と並ぶ「日本三大資格」の1つである公認会計士と同程度(過去10年平均で約10%)、二級建築士は日商簿記2級よりやや合格率が高くなります(2020年11月から2023年11月までの10回平均で20.9%)。

一般に合格率30%以下になると「難しい資格」といわれており、一級建築士も二級建築士も難易度の高い資格といえます。

◇試験範囲の違い

一級建築士と二級建築士の試験は、試験範囲も大きく異なります。

一級建築士 二級建築士
学科Ⅰ 計画
学科Ⅱ 環境・設備
学科Ⅲ 法規
学科Ⅳ 構造
学科Ⅴ 施工
学科Ⅰ 建築計画
学科Ⅱ 建築法規
学科Ⅲ 建築構造
学科Ⅳ 建築施工


一級建築士の場合は学科がⅠ~Ⅴまで、設計製図試験の2種類で構成されています。学科はⅠ計画、Ⅱ環境・設備、Ⅲ法規、Ⅳ構造、Ⅴ施工で、マークシートの4肢択一式となっています。

学科の合格者のみが設計製図試験に進めます。試験前に公表されている課題の図面を試験中に作成し、その意図を記述する試験です。設計条件などは当日に公表されるため、公表された条件などを満たす図面の設計と記述が必要となります。

対して二級建築士の試験は学科が1つ少なくⅠ~Ⅳまで、試験の構成は一級建築士と同じく設計製図試験もあり、学科の合格者しか次の試験に進めないのも同じです。

学科の内容はⅠ建築計画、Ⅱ建築法規、Ⅲ建築構造、Ⅳ建築施工で、5肢択一式です。設計製図試験は平面図、立面図、断面図、伏図、部分詳細図(矩計図)、面積表、計画の要点等などから6~9種類が出題されます。

◇受験資格の違い

一級建築士と二級建築士では、受験資格が異なるため注意が必要です。学歴のほかに実務経験も必要とされます。
一級建築士を受験するには、以下の3つの要件のうちどれかを満たしている必要があります。
(1)短大・専門学校以上の学歴(大学・短期大学・高等専門学校・専修学校など)があり、建築に関する指定科目を履修して卒業している
(2)二級建築士または建築設備士の有資格者
(3)国土交通大臣が(1)(2)と同等と認める者(外国大学を卒業した者など)

これに対し二級建築士の受験資格は以下の通りであり、学歴がなくとも7年間の実務経験があれば受験できるのが特徴です。
(1)高等学校卒業以上の学歴(大学・短期大学・高等専門学校・高等学校・専修学校・職業訓練校など)があり、建築に関する指定科目を履修して卒業している
(2)建築設備士の有資格者
(3)都道府県知事が(1)と同等と認める者(外国大学を卒業した者など)
(4)7年間の実務経験を有する者

一級、二級建築士ともに、学歴要件については入学年が「平成20年以前」と「平成21年度以降」で異なるほか、「実務経験要件」は、以下の実務経験期間ごとに要件が異なります。
(1)平成20年11月27日以前の建築実務
(2)平成20年11月28日から令和2年2月29日までの建築実務
(3)令和2年3月1日以降の建築実務

一級建築士と二級建築士の受験資格

一級建築士 二級建築士
(1)学歴 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校等において指定科目を履修し卒業した者 大学・短期大学・高等専門学校・高等学校・専修学校・職業訓練校等において、指定科目を履修し卒業した者
(2)資格 二級建築士または建築設備士 建築設備士
(3)その他 国土交通大臣が(1)(2)と同等と認める者(外国大学を卒業した者など) 都道府県知事が(1)と同等と認める者(外国大学を卒業した者など)
(4)実務経験 実務経験による受験資格はなし 7年の実務経験を有する者

詳しくは受験要綱などを確認してください。

一級建築士の合格率が低く難易度が高い理由

一級建築士の合格率が低く難易度が高い理由としては、各科目に合格基準点が設けられており、それを1つでも下回ると不合格となること、出題される問題の幅が非常に広いこと、建築の常識を前提に判断する必要があることなどが挙げられます。

特に不特定多数の方が利用する施設、大規模な建造物を建築できる一級建築士は、自然条件が建築物に与える影響や人にとって快適な環境をどう作るかを問われる出題が多くなります。二級建築士と比較すると、環境・設備で1つの学科試験が組まれており、その範囲の広さがうかがえます。

そのほかの学科試験でも、数百ページにおよぶ法令集の理解、記載してある場所の把握、構造、構造力学、建築材料などの実務に関わる出題、耐震設計に関する細かい構造の理解が必要な出題もあります。

また、実務に携わっていないとわからない工事や施工計画に関連した出題もあり、専門用語の理解など、多岐に渡ることを理解し、回答できる必要があるため、非常に難易度が高いです。

さらに試験時間は学科、設計製図試験共に各6時間半(二級建築士は学科6時間と設計製図試験5時間)と長く、集中力を保って回答していくことが難しい点も合格率の低さに関係しているでしょう。

◇モチベーションの維持

前述したように、一級建築士も二級建築士も学科だけではなく実技試験もあり、広い範囲の分野について知識と理解が問われます。
このような資格試験に向けての勉強では、モチベーションの維持が非常に重要です。
受験勉強期間が短くても半年、仕事をしながら勉強するとなると2年程度かけることも珍しくないからです。

資格学校では建築士取得のための講座として、短いもので半年程度、スタンダードなもので10カ月、長いものでは2年という期間をかけるものもあります。
講座は週1回、週末の場合は8時間程度の授業を受けるものも多く、最近ではオンラインで自宅で受講できるコースも増えてきました。
いずれにしても、休日が1日丸々潰れる程度の勉強量であるのには変わりません。

無理のない計画を立てて、勉強を続けるのがポイントといえます。

◇法改正に伴う資格試験内容の変更

一級建築士は、建築基準法の改正に伴って建築士法の改正が行われてきたという経緯もあり、試験内容が度々変更されます。
たとえば平成18年の改正建築基準法では、一定の高さ以上の建築物には構造計算審査が必要となり、建築確認・検査が厳格化され、建築士試験にもその内容が出題されるようになっています。

さらに、構造計算書の偽造など耐震設計の基準値を満たしていない建物が多数あることが発覚した事件により、2007年に建築基準法が改正されました。その影響は現在も続いており、建築士試験でも耐震設計に関して多くの出題があります。

一級建築士試験の勉強のポイント

一級建築士試験に受かるためには、勉強方法を知っておくことが非常に大切です。試験範囲をどうカバーするか、効率よく勉強するためにどのように計画を立てればよいかを紹介します。

◇試験日までの計画を立てる

一級建築士試験は出題範囲が広く、設計製図試験では記述が必要になるなど、深い理解を求められる問題が多いため、試験日までの計画を立てることが欠かせません。

自分の現在地を把握し、7月にある試験に合格するために学科と設計製図試験それぞれどの程度の対策が必要になるかを逆算してみましょう。学科のなかでも得意・不得意な分野があるはずなので過去問を解いて自分の得意・不得意を知り、どれだけの勉強時間をどの項目にあてるかを検討しましょう。

得意・不得意に応じてそれぞれの勉強時間を学科の法規は◯時間、構造には◯時間、設計製図試験の製図は◯時間、記述は◯時間などと定め、週にどの程度勉強時間を捻出できるのか、仕事の繁閑差も加味しながら考えて日時に落とし込んでいってください。

◇問題集と過去問をひたすら解く

他の資格試験同様たくさんの問題集や過去問が出ているため、自分の理解度にあったものを選び、それをひたすら解いていくようにしてください。覚えることがたくさんあるのでインプットを重視したくなるでしょうが、膨大な出題範囲のインプットをしていくうちに忘れてしまう可能性が高いです。インプットをしたあと、定期的にアウトプットをしなければ記憶に残りません。

そのため、アウトプットとして問題集や過去問をひたすら解いて反復をすることで、記憶の定着を促す方法がおすすめです。また、すべての学科で基準点を超える必要があるため、不得意分野の対策に重点をおいて実施しましょう。得意不得意分野を把握したあとに勉強し、問題集や過去問で記憶できているかを試して基準点を超えられるかというサイクルを回していけば、幅広い出題範囲でもコツコツ克服していけるようになるでしょう。

◇スキマ時間を活用する

最近では多くの資格試験用のアプリの開発がされ、勉強用の動画もたくさん配信されています。通勤時間や休憩時間に問題集を開くのは難しくても、アプリでの勉強であれば楽に実施できるという方も多いのではないでしょうか。

頭があまり働かない場合は復習として動画を見る、能動的にインプットできそうなときはアプリを使用するなど、仕事をしながらでも無理なく続けられる方法を選ぶとモチベーションの維持にもつながります。

負担のない方法を選んで、楽しく勉強を続けて試験合格を目指しましょう。

◇通信講座の利用

問題集や過去問を解いているだけでは理解が進まないと感じている方、計画通りに進められない、自分の勉強効率が悪いのではと気になってしまうという方には、通信講座の利用もおすすめです。

合格者を出すために講座配信側も綿密な計画を立てているため、自分で計画を立てられなくても問題ありません。また、理解が進みやすい試験対策となるような講座内容が準備されています。

1人ではモチベーションの維持や計画通りに勉強を実行することが難しいと不安がある場合には、通信講座を利用してチャレンジするとよいでしょう。もちろん、受講者レベルはそれぞれ違うため、自分にあっているかはよく確認して無駄のない通信講座選びを心がけてください。

まとめ

一級建築士試験は出題範囲が広く、深く理解をしていなければ解けない問題も多いため、適切な対策が必要です。対策の取り方はさまざまありますが、仕事をしながらの状況であることを理解し、自分にあった勉強方法を選べるかどうかが重要です。

出題範囲を網羅的に勉強する、モチベーションの維持、勉強時間の確保など、仕事をしながら実施するのは大変と感じるかもしれませんが、制限なく建築物を建てられる一級建築士試験に合格し、自分の夢を叶えていきましょう。

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