建築施工管理は資格を必須としませんが、業務の性質上、建築施工管理技士資格の取得が望まれます。施工管理技士資格は1級と2級があり、まずは登竜門である2級建築施工管理技士資格の取得を目指すことが一般的です。
2級建築施工管理技士資格を取得すると、具体的に何ができるのでしょうか?今回は、2級建築施工管理技士の概要、有資格者にしかできないこと、試験情報について解説します。
●施工管理の求人情報を探す
> 建築施工管理 > 土木施工管理 > 電気施工管理 > 空調衛生施工管理
2級建築施工管理技士資格とは?
建築施工管理技士資格とは、建設業法に基づく国家資格で、工事種別により7種類ある施工管理技士資格のうちのひとつです。建築施工管理技士は1級と2級があり、2級に限り、建築、躯体、仕上げという3つの区分があります。
2級建築施工管理技士資格を取得すると、主任技術者という現場に配置する技術者になることが可能です。ただし、2級建築施工管理技士の区分によって、主任技術者になれる工事の種類が以下のように異なります。
2級建築施工管理技士:技術者の許可種目
技術者区分 |
2級・主任技術者 |
||
建設工事の種類 |
建築 |
躯体 |
仕上げ |
建築(一式)工事 |
○ |
|
|
大工工事 |
|
○ |
○ |
左官工事 |
|
|
○ |
とび・土工・コンクリート |
|
○ |
|
石工事 |
|
|
○ |
屋根工事 |
|
|
○ |
タイル・レンガ・ブロック工事 |
|
○ |
○ |
鋼構造物工事 |
|
○ |
|
鉄筋工事 |
|
○ |
|
板金工事 |
|
|
○ |
ガラス工事 |
|
|
○ |
塗装工事 |
|
|
○ |
防水工事 |
|
|
○ |
内装仕上工事 |
|
|
○ |
熱絶縁工事 |
|
|
○ |
建具工事 |
|
|
○ |
解体工事 |
○ |
○ |
|
引用:建設管理センター
なお、1級建築施工管理技士の場合、主任技術者による工事種類の制限はありません。
2級建築施工管理技士の資格でできること
2級建築施工管理技士資格で認められる技術者、2級建築施工管理技士補について見ていきましょう。
建設現場に配置する技術者になれる
2級建築施工管理技士資格を取得すると、主任技術者、および専任技術者として認められます。
主任技術者とは元請、下請を問わず、すべての工事現場に配置する技術者のことです。一方、専任技術者とは、建設業の許可を得るための条件であり、事業所に配置する義務があります。専任技術者は許可を受けた営業所が請け負う建設工事における、適正な契約の締結と履行の確保を担う役割です。
主任技術者、専任技術者は配置が義務であるため、2級建築施工管理技士の有資格者は企業から一定の評価が得られます。無資格でも建築施工管理になれますが、2級建築施工管理技士資格を取得したほうが就職や転職で有利になるでしょう。
なお、請負代金が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上) の大規模な現場は、主任技術者ではなく「監理技術者」の配置が義務となっています。監理技術者は1級建築施工管理技士資格が必要で、2級建築施工管理技士資格は主任技術者にとどまるのが大きな違いです。
★あわせて読みたい
> 1級建築施工管理技士とは?資格を取得するメリットと試験情報を全解説!
経営事項審査で加点対象になる
経営事項審査とは、公共工事の入札に参加する業者に対し、経営力や技術力などの客観的事項を評価する審査のことです。経営事項審査の技術力評価において、2級建築施工管理技士の有資格者1人あたり2点が加点されます。公共工事を落札したい企業にとって、2級建築施工管理技士の有資格者を雇用するメリットがあるのです。
2級施工管理技士補にできることは?
施工管理技士試験は、マークシート式の第一次検定、記述を含む第二次検定で構成されています。建築施工管理技士の第一次検定に合格すると、「施工管理技士補」の資格が与えられます。
施工管理技士補とは、施工管理技士試験制度の改正で誕生した資格です。監理技術者不足を補うのが目的のひとつで、1級建築施工管理補は監理技術者の補佐が務められます。
2級建築施工管理技士補の場合、主任技術者の補佐になれる、という実務的なメリットはありません。ただし、2級建築施工管理技士補の資格を持ち、さらにCPDの単位を取得すると、経営事項審査の「社会性等(W)」項目で加点対象となります。
CPD(Continuing Professional Development)とは、技術者の継続教育という意味です。建築士や施工管理技士などの有資格者が、自身の力量の維持向上のために研修を受講します。
2級建築施工管理技士資格の試験情報
2級建築施工管理技士資格の試験内容、受検資格、合格率について解説します。
2級建築施工管理技士資格の試験内容
前述のとおり、2級建築施工管理技士は3つの区分が存在します。実際の試験で区分が関係するのは第二次検定であり、第一次検定は共通問題を受検するという仕組みです。
2級建築施工管理技士資格における、第一次検定、第二次検定の試験内容は次のとおりです。
2級建築施工管理技士資格における検定試験内容
区分 |
受検種別 |
検定科目 |
検定基準 |
知識/能力 |
解答形式 |
第 一 次 検 定 |
ー |
建築工学等 |
1.建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な建築学、土木工学、電気工学、電気通信工学及び機械工学に関する概略の知識を有すること。 2.建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な設計図書を正確に読みとるための知識を有すること。 |
知識 |
四肢 一択 |
施工管理法 |
1 .建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な施工計画の作成方法及び工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法に関する基礎的な知識を有すること。 |
知識 |
|||
2 .建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な基礎的な能力を有すること。 |
能力 |
四肢 二択 |
|||
法規 |
建設工事の施工の管理を適確に行うために必要な法令に関する概略の知識を有すること。 |
知識 |
四肢 一択 |
||
第 二 次 検 定
|
建 築 |
施工管理法 |
1 .主任技術者として、建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な知識を有すること。 |
知識 |
四肢 一択 |
2 .主任技術者として、建築材料の強度等を正確に把握し、及び工事の目的物に所要の強度、外観等を得るために必要な措置を適切に行うことができる応用能力を有すること。 3 .主任技術者として、設計図書に基づいて、工事現場における施工計画を適切に作成し、及び施工図を適正に作成することができる応用能力を有すること。 |
能力 |
記述 |
|||
躯 体 |
躯体 施工管理法 |
1 .建築一式工事のうち基礎及び躯体に係る工事の施工の管理を適確に行うために必要な概略の知識を有すること。 |
知識 |
四肢 一択 |
|
2 .基礎及び躯体に係る建築材料の強度等を正確に把握し、及び工事の目的物に所要の強度等を得るために必要な措置を適切に行うことができる高度の応用能力を有すること。 3 .建築一式工事のうち基礎及び躯体に係る工事の工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法を正確に理解し、設計図書に基づいて、当該工事の工事現場における施工計画を適切に作成し、及び施工図を適正に作成することができる高度の応用能力を有すること。 |
能力 |
記述 |
|||
仕 上 げ |
仕上 施工管理法 |
1.建築一式工事のうち仕上げに係る工事の施工の管理適確に行うために必要な概略の知識を有すること。 |
知識 |
四肢 一択 |
|
2.仕上げに係る建築材料の強度等を正確に把握し、及び工事の目的物に所要の強度、外観等を得るために必要な措置を適切に行うことができる高度の応用能力を有すること。 3.建築一式工事のうち仕上げに係る工事の工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法を正確に理解し、設計図書に基づいて、当該工事の工事現場における施工計画を適切に作成し、及び施工図を適正に作成することができる高度の応用能力を有すること。 |
能力 |
記述 |
出典:一般財団法人 建築業振興基金
なお、合格基準は、第一次検定、第二次のいずれも60%以上です。
2級建築施工管理技士資格の受検資格
2級建築施工管理技士資格の第一次検定のみ受検する場合、17歳以上なら誰でも受検が可能です。令和5年11月9日に国土交通省より、令和6年度以降の受検資格の見直しが発表され、受験資格が緩和されました。
新旧の受験資格で実務経験の考え方自体が異なるため、必ず受検の手引を確認してください。
2級建築施工管理技士資格における旧受験資格
区分 |
受検 種別 |
学歴 |
実務経験年数 |
|
指定学科卒業 |
指定学科以外卒業 |
|||
イ |
建築 躯体 仕上げ
|
大学 専門学校卒業者の 「高度専門士」 |
卒業後 1年以上 |
卒業後 1年6カ月以上 |
短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校卒業者の「専門士」 |
卒業後 2年以上 |
卒業後 3年以上 |
||
高等学校・中高一貫校 専門学校の専門課程 |
卒業後 3年以上 |
卒業後 4年6カ月以上 |
||
その他(学歴不問) |
8年以上 |
区分 |
受検 種別 |
技能士 (職業能力開発促進法による技能検定合格者) |
技能検定の合格年度と級別 |
建築施工管理に関する実務経験年数 |
ロ |
躯 体 |
【検定職種】 ・鉄工〔構造物鉄工作業〕 ・とび ・ブロック建築 ・型枠施工 ・鉄筋組立て ・鉄筋施工〔鉄筋組立て作業〕 ・コンクリート圧送施工 ・エーエルシーパネル施工 |
平成15年度以前に左欄の検定職種に合格した者 |
実務経験年数問わず |
平成16年度以降に1級の左欄の検定職種に合格した者 (単一等級エーエルシーパネル施工を含む) |
||||
平成16年度以降に2級の左欄の検定職種に合格した者 |
合格の有無を問わず通算4年以上 |
|||
ハ |
仕 上 げ |
【検定職種】 ・建築板金〔内外装板金作業〕 ・サッシ施工 ・石材施工〔石張り作業〕 ・ガラス施工 ・建築大工 ・石工〔石張り作業〕 ・表装〔壁装作業〕 ・左官 ・タイル張り ・塗装〔建築塗装作業〕 ・畳製作・れんが積み ・防水施工 ・熱絶縁施工 ・スレート施工 ・内装仕上げ施工〔プラスチック系床仕上げ工事作業、カーペット系床仕上げ工事作業、鋼製下地工事作業、ボード仕上げ工事作業〕 ・床仕上げ施工 ・天井仕上げ施工 ・カーテンウォール施工 |
平成15年度以前に左欄の検定職種に合格した者 |
実務経験年数問わず |
平成16年度以降に1級の左欄 の検定職種に合格した者 (単一等級れんが積みを含む) |
||||
平成16年度以降に2級の左欄 の検定職種に合格した者 |
合格の有無を問わず通算4年以上 |
出典:一般財団法人 建築業振興基金
2級建築施工管理技士資格における新受検資格
必要実務経験 |
|
1 |
2級建築施工管理技術検定 第一次検定合格後、実務経験3年以上 |
2 |
1級建築施工管理技術検定 第一次検定合格後、実務経験1年以上 |
3 |
一級建築士試験合格後、実務経験1年以上 |
詳細は、事前に受検の手引きを確認しておきましょう。
2級建築施工管理技士資格の合格率
令和元年~令和6年に実施された、2級建築施工管理技士の第一次検定、第二次検定の合格率は次のとおりです。
年度 |
第一次検定 (旧学科試験) |
第二次検定 (旧実地試験 ) |
令和元年 |
33.3%(前期) 25.3%(後期) |
27.1% |
令和2年 |
コロナのため中止(前期) 35.9%(後期) |
28.2% |
令和3年 |
37.9%(前期) 48.8%(後期) |
35.1% |
令和4年 |
50.7%(前期) 42.3% |
53.1% |
令和5年度 |
37.7%(前期) 49.4%(後期) |
32.0% |
令和6年度 |
48.2%(前期) 50.5%(後期) |
40.7% |
まとめ
2級建築施工管理技士はすべての建設現場に配置する主任技術者、専任技術者になれる資格です。2級建築施工管理技士は3つの区分があり、主任技術者になれる工事の種類が異なります。
主任技術者などの配置は義務となっているため、企業側は有資格者を雇用するメリットがあります。施工管理は資格がなくてもできる仕事ですが、2級建築施工管理技士を取得した方が就職で有利になるでしょう。試験の合格率は50%前後と比較的高いため、これから建築施工管理を目指す方は、早めに受検することをおすすめします。
資格取得に必要な実務経験など、不明点がある方は、ベスキャリ建設のアドバイザーにご相談ください。