「1級電気工事施工管理技士」は、電気工事関係や建築関係の仕事において、非常に有用な資格です。ただ受験資格などが複雑なため混乱する方もいるのではないでしょうか。今回は1級電気工事施工管理技術検定について解説するとともに、変更された受験資格や効率的な検定対策などについても説明します。
1級電気工事施工管理技術検定の内容
建築物における電気工事の施工計画の立案、施工工事の管理・監督を行う人に求められる「電気工事施工管理技士」は、1級と2級に分けられています。
ここでは1級を例に、解説をしていきましょう。
◇第一次検定
1級電気工事施工管理技術検定には、「第一次検定」と「第二次検定」があります。第一次検定にのみ合格した場合は「1級電気工事施工管理技士補」を、第一次検定と第二次検定の両方に合格した場合は「1級電気工事施工管理技士」を名乗れるようになります。
第一次検定では、下記の3つの項目について知識が問われます。
・電気工学……電気工事で求められる電気工学や建築学などの知識が問われます。発電・変電などに関する問題のほか、設計図に関する知識を問う問題も設けられています。
・施工管理法……施工・工程・品質・安全の4分野の管理に関する問題と、応用力を問う問題が出題されます。
・法規……工事を行ううえで、知っておかなければならない法律的な知識がチェックされます。
第一次検定はマークシート形式です。4択あるいは5択の中から、正答を選ぶことになります。
◇第二次検定
第二次検定では、施工管理法について出題されます。
2つの分野に別れており、1つめは監理技術者としての能力を問う問題です。これは記述式で、実際に自分が行った工事経験をはじめ、安全・品質・工程管理について文章で記述するよう求められます。
2つめは監理技術者としての知識を問う問題です。専門用語群からいくつかの用語を選び、その解説を行うことが求められます。そのほか計算問題・知識問題などが出されます。
◇合格基準
合格基準は、第一次検定でも第二次検定でも「60%」と定められています。
ただし第一次検定では、「全体の平均得点が60%を超えていたとしても、施工管理法の得点が50%に満たない」場合は足切りが行われます。
つまり電気工学部門と法規部門で仮に満点をとったとしても、施工管理法部門で半分以上正解しないと、不合格となります。
令和6年度の日程と会場
令和6年度の電気工事施工管理技術検定の実施日程および会場は下記の通りです。
書面申込 | インターネット申込 | |
令和6年2月9日(金) | 第一次検定・第二次検定申込書販売開始 | |
2月22日(木) | 第一次検定・第二次検定申込受付開始 | 第一次検定・第二次検定申込受付開始 |
3月8日(金) | 第一次検定・第二次検定申込受付締切 | 第一次検定・第二次検定申込受付締切 |
6月24日(月) | 電気工事 第一次検定受検票送付 | |
7月14日(日) | 電気工事 第一次検定 実施 | |
8月23日(金) | 第一次検定合格発表 当年度第一次検定合格者の第二次検定受検手数料払込受付開始 |
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9月6日(金) | 当年度第一次検定合格者の第二次検定受検手数料払込受付締切 | |
9月30日(月) | 第二次検定受検票送付 | |
10月20日(日) | 第二次検定実施 | |
令和7年1月10日(金) | 第二次検定合格発表 |
試験地(10地区)札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄
参考:(一財)建設業振興基金試験研修本部「令和6年度建築及び電気工事施工管理技術検定実施日程について」
受検資格
次に受検資格について整理していきましょう。受検資格が変更されたため、特に確認が必要です。
◇第一次検定の受検資格
令和6年度から検定制度が見直され、第一次検定の受検資格が「19歳以上であれば可」と大幅に緩和されました。旧受検資格との違いは以下の通りです。
<新受検資格>
19歳以上(受検年度末時点)
<旧受検資格>
学歴や資格 | 指定学科 | 指定学科以外 | |
大学 | 卒業後3年以上 | 卒業後4.5年以上 | |
短大・高専・専門学校の専門士 | 卒業後5年以上 | 卒業後7.5年 | |
高校・中学・専門 | 卒業後10年以上 | 卒業後11.5年以上 | |
その他(学歴問わず) | 通算15年以上 | ||
第一種、第二種または第三種電気主任技術者 | 通算6年以上 | ||
第一種電気工事士 | 実務経験年数は問わず | ||
2級合格者 | 合格後5年以上 | ||
2級合格後の 実務経験が 5年未満 |
短大・高専・ 専門学校の専門士 |
2級二次合格による 短縮なし |
卒業後9年以上 |
高校・中学・ 専門学校の専門課程 |
卒業後9年以上 | 卒業後10.5年以上 | |
その他(学歴問わず) | 通算14年以上 |
令和6年度から令和10年度までは、旧受検資格と新受検資格の選択が可能です。
なお「技士補」は令和3年度から新設された資格です。それ以前は2回連続して第二次検定(旧実地試験)に不合格だった場合、第一次検定(旧学科試験)から受検し直しでした。現在はこの期限は撤廃されています。
◇第二次検定の受検資格
電気工事施工管理技術検定の第二次検定の受検資格は、整理すると以下の3つとなります。
・1級電気工事施工管理技術検定の第一次検定に合格したのち、実務経験を3~5年積む(※従事する業務内容によって異なる)
・2級電気工事施工管理技術検定の第二次検定に合格したのち、実務経験を3年~5年積む(※従事する業務内容によって異なる)
・第一種電気工事士の試験合格(もしくは免状が交付された)のちに、実務経験を3年~5年積む(※従事する業務内容によって異なる)
旧受検資格では定められた学歴と実務経験を満たしていれば受検ができましたが、基本的には第一次検定に合格し、「1級電気施工管理技士補」としての実務経験を一定期間経ることが必要になったといえます。
実務経験の考え方は旧受検資格と新受検資格では異なっていますので、詳しくは検定を運用している建設業振興基金発行の手引きなどを確認してください。
1級電気工事施工管理技術検定試験の難易度と合格率
1級電気工事施工管理技術検定の合格率は都市によって大きく違いがありますが、第一次検定で38%~57%程度とされています。平均すれば46%程度です。
また、第二検定の合格率は、58%~74%で推移していますが、平均すれば67%程度です。
◇ほかの電気系資格との難易度の違い
電気工事関係の資格はいくつかあります。
その中で難易度が低いのは第二種電気工事士の資格であり、この資格は専門学校の生徒でも夏休みなどに取得できる資格です。また、2級電気工事施工管理技士の資格は、第二種電気工事士よりもやや難易度は高いものの、これも専門学校の生徒ならば十分取得可能とされています(受験資格は17歳以上)。
第一種電気工事士や1級電気施工管理技士の場合、上述したように実務経験が必要になってくることが多いといえます。そのため、試験の難易度もさることながら、受検資格を取得すること自体にある程度高いハードルがあります。
なお「電検三種」と呼ばれる「電気主任技術者試験」は、難易度的にも非常に高いといわれています。第一種電気工事士や第一種電気施工管理技士の試験を一度でクリアした人であっても、苦戦する可能性は高いといえます。ただし、指定学科を卒業した人は、試験を受けることなく、資格の取得が可能です。
1級電気工事施工管理技術検定の勉強のポイント
ここからは、1級電気工事施工管理技術検定の勉強のポイントについて紹介していきます。
勉強方法は第一次検定と第二次検定で大きく異なります。それぞれの特徴を押さえて、勉強を進めましょう。
◇検定までの勉強スケジュールを立てる
一般的に第一次検定は「勉強をすれば突破できるもの」といわれています。
いろいろな勉強法がありますが、過去問を上手に使うと効率的です。
まず、過去問を10年分用意し、ざっと問題を解いてみましょう。すると自分の得意な分野と苦手な分野が把握できるので、「得意な分野で70%をとること」を目標にスケジュールを立てます。
苦手分野を潰すのではなく得意分野から手を付けるのは、1級電気工事施工管理技術検定は満点をとる必要はないからです。全体で60%得点すればよいため、得意分野を中心に勉強することで効率的に得点を稼ぐことができます。
第二次検定の問題1-1では、必ず「過去の電気工事」の記述が求められます。問題2以降は実務経験を積んでいる人ならば知っていて当たり前の内容であるため、それほど対策に時間をかける必要はないようです。
そのため第二次検定に向けては、問題1-1を完璧に書けるよう練習する時間を確保することがポイントとなります。
◇解答だけでなく解説も読む
1級電気工事施工管理技術検定の第一次検定対策は、参考書や過去問を使って勉強し、独力でも突破することは可能だといわれています。
問題を解く際には解説もしっかり読んで、解説文を暗記するくらいまで理解しましょう。第一次検定は選択問題となるため、「正しい答えを覚える」ことがポイントとなります。
なお第一次検定は、さまざまな分野から網羅的に出題されます。難易度自体は高すぎるわけではないので、素直に回答するよう心掛けていくことが重要とされています。
前述の通り第二次検定の問題1-1では、毎年「過去の電気工事」が問われます。
「工事名」は「その工事がどのような工事であるか」が分かる名称(○○引き込み線工事など)で書く、「工事場所」は地番まで、「請負金額」は500万円以上のものを記載するなど、コツがあります。過去問題集の解説をよく読み、模範解答をつくって練習をしましょう。
◇資格学校の講習や通信講座を活用する
第一次検定は独学でも突破が可能ですが、第二次検定対策では資格学校や通信講座を使ったほうがよいといわれます。
最終的な合格・不合格に関わらず、採点結果や加点/減点項目について開示されません。正解が非常に分かりづらいため、独力で勉強するのはなかなか難しいのです。
通信講座などを利用して、「受かるための添削」をしてもらうことが合格への近道といえます。
◇スキマ時間を活用する
1級電気工事施工管理技術検定の勉強は、スキマ時間にコツコツ行うことも重要です。
たとえば「電車の通勤時間は必ず勉強にあてる」などのようなやり方です。
これは習慣化することが非常に重要であるため、毎日積極的に取り組むようにするとよいでしょう。
まとめ
「1級電気工事施工管理技術検定」は、令和3年と令和6年に大きく変更されました。
受検資格が緩和され若いうちから挑戦できるようになるなど、
ただ、電気工事に携わる人ならば持っておきたい資格の1つといえ、計画的に勉強時間を確保し、取得を目指していきましょう。