1級建築施工管理技士は、建築工事の施工管理に関する高度な知識と技術を持つことを証明する国家資格です。国土交通省が管轄し、一般財団法人建設業振興基金が試験を実施しています。
1級建築施工管理技士になると、建築工事の「主任技術者」および「監理技術者」としての業務が可能となり、大規模な建築プロジェクトの施工管理を担当できるようになるので活躍の場が広がるでしょう。
今回は、1級建築施工管理技士の概要や受験資格や合格率、難易度、勉強方法について解説について徹底解説します。2025年度(令和7年度)の1級建築施工管理技士技術検定の日程(試験日)もまとめたので受験を検討している方に必見です。
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1級建築施工管理技士とは?
建築施工管理技士とは、建設業法で定める施工管理技士資格のひとつです。1級建築施工管理技士資格は建築施工管理のプロフェッショナルと認められる、最も重要な位置付けの資格といえるでしょう。
1級建築施工管理技士の仕事内容は、建築工事の施工計画、工程、品質、安全などの管理を行います。
業務内容 | 詳細説明 |
---|---|
施工計画の立案 | 工事の全体スケジュールや施工方法を決定し、計画を立案する |
品質管理 | 使用する材料や施工方法が基準を満たしているかを管理する |
安全管理 | 作業員の安全対策を実施し、事故防止のための指導を行う |
工程管理 | 工事が計画通りに進むようにスケジュールを管理する |
施工計画とは、予算どおりに工事を進めるため、工程や各工事の作業工程を組み合わせ、具体的な工法を決定します。また、資財の使い方や予算管理、資材の発注、廃棄物の処理方法も、施工計画の仕事です。工程管理は工程表を作成し、人員や機材、スケジュールの調整を行います。施工の進捗状況を常に把握し、進捗の遅れがある場合は対策を講じる必要があります。
品質管理は、仕様書や設計図書で定める品質を満たしているか確認する業務です。施工中の写真撮影で記録を残したり、所定の検査で品質をチェックしたりします。安全管理は事故なく工事を完遂できるよう、安全教育や作業環境の整備、作業員の健康チェックなどの取り組みを実施します。
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【2025年度(令和7年度)】1級建築施工管理技士の試験日や合格発表日、受験資格
ここでは、2025年度(令和7年度)の1級建築施工管理技士技術検定の日程(試験日)や受験資格などの試験概要をまとめます。試験内容や合格率、2級建築施工管理技士との試験の違いも解説します。
1級建築施工管理技士試験の仕組み
1級建築施工管理技士試験について、スケジュールや受検資格、試験内容などをご紹介します。合格率や2級建築施工管理技士との試験の違いも解説します。
1級建築施工管理技士試験のスケジュール
1級建築施工管理技士試験のスケジュールについて、第一次・第二次検定それぞれの詳しい試験日程や合格発表日をみていきましょう。なお、1級建築施工管理技士試験の情報は、国土交通省の「令和7年度建築施工管理技術検定の実施について 」と一般財団法人国家資格支援機構「建築施工管理技士」をもとにまとめています。
関連事項 |
第一次検定 |
第二次検定 |
願書販売開始 |
2025年2月7日(金)~ |
2025年2月7日(金)~ |
受検申込 |
2025年2月14日(金)~2月28日(月) |
2025年2月14日(金)~2月28日(金) |
試験日 |
2025年7月20日(日) |
2025年10月19日(日) |
合格発表 |
2025年8月22日(金) |
2026年1月9日(金) |
1級建築施工管理技士は年1回、第一次および第二次検定が行われます。注意すべき点は、第一次・第二次検定ともに願書受付期間が同じで、試験日のみ異なる点です。
当該年度に合格を目指しているなら、第一次・第二次ともに願書を提出する必要があります。第一次検定のみ受検申込をした場合、同じ年度内に第二次検定を受けることができないため、同時受験する場合は間違えないように注意しましょう。
また第二次検定の合格発表日は、翌年度の願書受付期間中になる可能性が高いため、翌年度の願書も取り寄せることをおすすめします。
1級建築施工管理技士の受検資格
1級建築施工管理技士の受検資格は、下記表のとおりです。区分ニ以外はいずれも1年以上の指導監督的実務経験を含むことが必要です。
詳細は、一般財団法人国家資格支援機構「建設施工管理技士」のページをご確認ください。
必要条件 | |
---|---|
第一次検定 | 試験実施年度に満19歳以上となる者 |
第二次検定 |
【区分1】1級第一次検定合格者 1-1 1級建築第一次検定合格後、実務経験5年以上 |
【区分2】1級第一次検定、および2級第二次検定合格者 (※3) 2-1 2級建築第二次検定合格後 (※3)、実務経験5年以上 2-2 2級建築第二次検定合格後 (※3)、特定実務経験 (※1) 1年以上を含む実務経験3年以上 |
|
【区分3】1級第一次検定受検予定、および2級第二次検定合格者 (※3) 3-1 2級建築第二次検定合格後 (※3)、実務経験5年以上 3-2 2級建築第二次検定合格後 (※3)、特定実務経験 (※1) 1年以上を含む実務経験3年以上 |
|
【区分4】一級建築士試験合格者 4-1 一級建築士試験合格後、実務経験5年以上 4-2 一級建築士試験合格後、特定実務経験 (※1) 1年以上を含む実務経験3年以上 |
※1 建設業法の適用を受ける請負金額4,500万円(建築一式工事については7,000万円)以上の建設工事であって、監理技術者・主任技術者(いずれも実務経験対象となる建設工事の種類に対応した監理技術者資格者証を有する者に限る)の指導の下、または自ら監理技術者若しくは主任技術者として行った施工管理の実務経験を指します。
※2 建設業法第26条第3項に定める監理技術者を補佐する者のことを指します。
※3 旧2級施工管理技術検定実地試験合格者を含み、種別(建築・躯体・仕上げ)を問いません。
1級建築施工管理技士における受検資格の緩和
2021年度の建設業法改正により、1級建築施工管理技士の試験制度が見直され、新たに「1級建築施工管理技士補」が設けられました。さらに、2024年度からは第一次検定の受検資格が緩和され、19歳以上であれば誰でも受検可能になりました。この背景には、少子高齢化による監理技術者の不足があり、建設現場の人材確保が急務だったことが挙げられます。
資格制度の改正により、1級建築施工管理技士補の配置で監理技術者の工事現場の掛け持ちが可能になり、第一次検定の合格有効期限も無期限に変更されています。これにより、早期に実務経験を積み、キャリアアップを目指しやすい環境が整えられたといえるでしょう。
1級建築施工管理技士の試験内容
1級建築施工管理技士の第一次・第二次検定の試験内容は次のとおりです。
検定区分 |
検定科目 |
検定基準 |
解答形式 |
第一次検定 |
建築学等 |
1.建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な建築学、土木工学、電気工学、電気通信工学及び機械工学に関する一般的な知識を有すること 2.建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な設計図書に関する一般的な知識を有すること |
四肢一択 |
施工管理法 |
1.監理技術者補佐として、建築一式工事の施工の管理を適格に行うために必要な施工計画の作成方法及び工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法に関する知識を有すること |
四肢一択 |
|
2.監理技術者補佐として、建築一式工事の施工の管理を適格に行うために必要な応用能力を有すること |
五肢二択 |
||
法規 |
建設工事の施工の管理を適確に行うために必要な法令に関する一般的な知識を有すること |
四肢一択 |
|
第二次検定 |
施工管理法 |
1.監理技術者として、建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な知識を有すること |
五肢一択(マークシート方式) |
2.監理技術者として、建築材料の強度等を正確に把握し、及び工事の目的物に所要の強度、外観等を得るために必要な措置を適切に行うことができる応用能力を有すること 3.監理技術者として、設計図書に基づいて、工事現場における施工計画を適切に作成し、及び施工図を適正に作成することができる応用能力を有すること |
記述 |
第一次検定では、建築学・共通・躯体施工・仕上げ施工・施工管理法・法規・応用問題まで合わせて、全72問が出題されます。そのなかから、必須問題と選択問題で60問に回答し、60%にあたる36問以上正解することで合格できます。
第二次検定は施工経験記述・安全管理・躯体施工・仕上げ施工・施工管理・法規から、1問ずつ出題され、60%正解で合格です。
1級建築施工管理技士試験の合格率と難易度
1級建築施工管理技士の第一次検定と第二次検定の合格率は年度ごとに変動があります。第一次検定は、近年では令和4年度が46.8%と比較的高かったものの、令和6年度は36.2%と低下しています。
第二次検定は、令和3年度が52.4%と最も高い一方、令和6年度は40.8%とやや低めの水準となりました。全体として1級建築施工管理技士試験は、受験者数が増加傾向にあり、合格率は年度によってばらつきが見られます。
試験年度 |
第一次検定合格率 |
第二次検定合格率 |
令和6年度 |
36.2% |
40.8% |
令和5年度 |
41.6% |
45.5% |
令和4年度 |
46.8% |
45.2% |
令和3年度 |
36.0% |
52.4% |
令和2年度 |
51.1% |
40.7% |
試験の合格率は年度によって大きく変動します。その点を理解したうえで解説すると、第一次検定の合格率は40%前後、第二次検定の合格率は40%台半ばです。年によっては50%を超えることもありますが、ほとんどは40%台で収まっています。
関連記事:二級建築士の難易度・合格率は?勉強法や一級建築士との違いも解説
2級建築施工管理技士試験との違い
1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士では、出題される内容自体に大きな違いはありません。しかし受検資格の違いから、2級建築施工管理技士は高校生や実務未経験者が受検するケースもあります。
そのため、2級の第一次検定の合格率は1級よりやや低い傾向があり、さらに第二次検定は合格率が30%前後と低いです。試験科目はほぼ同じですが、実務経験の有無で2級建築施工管理技士は相対的に難易度が高くなります。
1級建築施工管理技士は一定の学歴や実務経験が必要ですが、2級建築施工管理技士は17歳以上なら誰でも受検可能で、取得しやすい国家資格といえます。将来的に建設業に就職するのであれば、高校生の時点で受検できる2級建築施工管理技士は目指す価値があるのは間違いありません。
また、1級建築施工管理技士は2級建築施工管理技士を取得していれば受検可能です。キャリアアップを狙うなら、まずは2級建築施工管理技士を取得するのがおすすめです。
関連記事:一級建築士と二級建築士の違いは?難易度・合格率、試験突破のポイントを解説
1級建築施工管理技士になるには実務経験が必要
2024年度(令和6年度)の施工管理技術検定より、第一次検定受検の学歴や実務経験の制限が緩和され、令和6年度末(2025年3月31日)の時点で19歳以上であれば誰でも受検できるようになりました。
これにより、今まで受検資格を満たせなかった学生の方や、建設業に従事しているものの学歴で受検できなかった方なども「いきなり1級の第一次検定受検が可能」になりました。
1級建築施工管理技士試験のおすすめ勉強方法と勉強時間
1級建築施工管理技士の試験は、午前の部と午後の部に分かれています。午前の部は44問中10問が必須問題、午後の部は28問中16問が必須問題です。
【午前の部の必須問題の科目】
- 建築学:設備その他積算、契約から5問
- 施工管理法:施工計画から5問
【午後の部の必須問題の科目】
- 施工管理法:工程管理・品質管理・安全管理から10問
- 新設:躯体・仕上げから6問
上記の必須問題は、1級建築施工管理技士試験で必ず回答しなければならない問題です。そのため、学習計画においては十分な対策を行う必要があります。
1級建築施工管理技士の合格基準は正解率が60%以上のため、必須問題を除いた残りの選択問題のどの科目に力を入れるかも鍵になります。考え方としては、問題数の多い建築学と躯体、仕上げの学習をしっかりすることです。
特に躯体と仕上げは午前・午後ともに出題されるため、十分な対策を行いましょう。すでに建築系の資格を取得しており、実務経験が十分にある方なら、普段の業務で直接触れる機会の少ない法規の学習がおすすめです。
一方、過去に建築系の資格を取得しているものの、実務経験が少ない方の場合、配点が高く、試験範囲が広い施工管理法から学習をスタートすることをおすすめします。
実務経験や知識量、保有資格なども加味しながら、適切な学習スケジュールを計画しましょう。
1級建築施工管理技士の平均年収
厚生労働省が運営する「職業情報提供サイト」によると、建築施工管理技術者の平均年収は約633万円です。国税庁によると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は461万円と公表されているため、1級建築施工管理技士は高年収だといえます。
このデータは、1級建築施工管理技士だけではなく、管工事施工管理技士、 給排水設備工事施工管理者、 空調衛生設備施工管理技術者、 建築工事現場監督、 プラント建設工事施工管理技術者、 内装工事施工管理技術者なども含まれます。
関連記事:一級施工管理技士の年収・求人例を紹介!年収を上げるコツも知っておこう
1級建築施工管理技士に関連するよくある質問
ここでは、1級建築施工管理技士に関連するよくある質問に対して、Q&A形式で回答します。気になる項目があればぜひチェックして疑問や不安を払拭しましょう。
1級建築施工管理技士の難易度は?
1級建築施工管理技士の難易度は高く、合格率は30〜40%程度です。 「学科試験(第一次検定)」と「実地試験(第二次検定)」があり、特に実地試験は記述式のため対策が必要です。施工計画や法規、安全管理など幅広い知識が求められ、実務経験を活かした論述力も重要になります。しっかりとした試験対策と計画的な学習が合格の鍵となります。
1級建築施工管理技士の年収は?
1級建築施工管理技士の年収は、公的なデータがないため断言できませんが、約500万〜800万円といわれており、経験や勤務先によっては1,000万円以上も可能です。 大手ゼネコンや管理職に就くと収入が上がり、資格手当が支給される企業も多いため、取得による給与アップが期待できます。さらに、独立やフリーランスとして活躍すれば、より高収入を目指すことも可能です。
1級建築施工管理技士になるには何年かかりますか?
1級建築施工管理技士を取得するには、一般的に3年、長い場合は10年以上かかります。 受験資格として実務経験が必要で、建築系の大卒なら3年以上、短大・専門卒なら5年以上、高卒なら11年以上の経験が求められます。学歴によって必要な年数が異なるため、資格取得を目指す場合は早めに計画を立て、実務経験を積むことが重要です。
1級建築施工管理技士は何ができる?
1級建築施工管理技士は、大規模な建築工事の施工管理を担当し、監理技術者や専任技術者として現場を統括できます。 具体的には、施工計画の立案、品質・安全・工程・原価管理などを行い、建設プロジェクトの円滑な進行を支えます。さらに、特定建設業の要件を満たし、公共工事の入札にも関われるため、キャリアアップや年収向上の大きなチャンスにつながる資格です。
1級建築施工管理技士の資格はすごい?
1級建築施工管理技士は、建設業界でトップクラスの権威を持つ国家資格であり、取得することで大規模工事の施工管理や監理技術者としての業務が可能になります。 また、公共工事の入札要件を満たし、キャリアアップや年収増加につながるため、企業からの評価も高いです。独立やフリーランスの道も開けるため、建設業界で長く活躍したい人にとって非常に価値のある資格です。
一級建築施工管理技士はどんな仕事ができますか?
1級建築施工管理技士は、大規模な建築工事の現場監督として、施工管理業務全般を担当できます。具体的には、施工計画の立案、品質・安全・工程・原価管理、監理技術者としての業務などを行い、建設プロジェクトを円滑に進める役割を担います。また、特定建設業の専任技術者や監理技術者として認められるため、公共工事の入札要件を満たし、より責任のあるポジションで活躍できるのが特徴です。
一級施工管理技士を取るとどうなる?
1級施工管理技士を取得すると、大規模な建築工事の施工管理が可能になり、キャリアアップや年収増加のチャンスが広がります。 監理技術者として特定建設業の工事現場を指揮できるほか、公共工事の入札要件を満たすため、ゼネコンや大手建設会社での活躍が期待されます。資格手当や昇進により年収1,000万円以上も可能で、転職や独立にも有利な国家資格です。
1級建築施工管理技士補を取得するとどんなメリットがありますか?
1級建築施工管理技士補を取得すると、責任ある現場を任される機会が増え、実務経験を積むことができます。また、求人の中には1級建築施工管理技士補の資格を応募条件としているものもあり、仕事の選択肢が広がる点も大きなメリットです。
1級施工管理技士とはどのような国家資格ですか?
1・2級建築施工管理技士の技術検定制度は、建設業法第27条に基づく国家試験です。1級建築施工管理技士の資格を取得すると、特定建設業における「営業所ごとに置く専任の技術者」および、現場に配置する「監理技術者」として認められます。
いきなり1級建築施工管理技士を取得することは可能?
2024年度(令和6年度)の施工管理技術検定の改正により、第一次検定(旧・学科試験)の受検資格が緩和され、学歴や実務経験の制限が撤廃されました。そのため、令和6年度末(2025年3月31日)の時点で19歳以上であれば、誰でも受検が可能です。この見直しにより、これまで受検資格のなかった学生や、学歴要件を満たせなかった建設業従事者も、直接1級の第一次検定を受けることができるようになりました。