建設業は、道路や橋、住宅、学校、病院など、私たちの暮らしに欠かせない社会インフラを支える重要な産業です。
一方で、就業者数の減少や高齢化、長時間労働、賃金水準、安全対策など、さまざまな課題を抱えています。
近年は、時間外労働の上限規制の適用や週休2日の推進、公共工事設計労務単価の引き上げなどにより、働き方や処遇を改善する動きも進んでいます。
本記事では、厚生労働省の「建設業従事者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」の情報をもとに、建設業の現状や課題、働き方の変化、今後の将来性についてわかりやすく解説します。
【2026年最新】建設業の現状
建設業は、社会インフラの整備や維持管理、災害復旧、防災・減災などを担う産業です。
しかし、近年は就業者数の減少や高齢化が進んでおり、将来的な担い手確保が大きな課題となっています。
一方で、新規学卒者の入職者数は一定数を維持しており、女性の就業率も上昇傾向にあります。まずは、建設業の現在の状況を見ていきましょう。
| 確認項目 | チェックしたい内容 |
|---|---|
| 休日制度 | 週休2日制か、年間休日数はどのくらいか |
| 残業時間 | 平均残業時間や繁忙期の働き方はどうか |
| 給与・手当 | 基本給、残業代、資格手当、現場手当などが明確か |
| 資格取得支援 | 受験費用や講習費の補助、資格取得後の手当があるか |
| 安全対策 | 安全研修や保護具の支給、現場での事故防止策が整っているか |
建設業者数は約47~48万社で横ばい傾向
建設業者数は、2000年代以降減少傾向にありましたが、近年では約47~48万社でほぼ横ばいの状況が続いています。
建設業は、大手ゼネコンから地域密着型の建設会社、一人親方まで、さまざまな規模の事業者によって成り立っています。道路や橋、住宅、公共施設など、地域の暮らしを支える仕事が多く、地方においても重要な役割を担っている点が特徴です。
ただし、事業者数が横ばいで推移している一方で、働く人の数は長期的に減少しており、業界全体としては人材確保が重要なテーマになっています。
出典:建設業の概況|厚生労働省
建設就業者数はピーク時から減少している
建設就業者数は、1997年をピークに減少傾向に転じ、現在は約477万人となっています。
就業者数が減少している背景には、少子高齢化による労働力人口の減少に加え、建設業に対する「体力的にきつい」「休みが取りづらい」「労働時間が長い」といったイメージも関係していると考えられるでしょう。
建設業は、インフラ整備や災害復旧など社会に欠かせない仕事を担っているため、就業者数の減少は業界だけでなく、地域社会にも影響する可能性があります。
そのため、若手人材の確保や働きやすい職場づくりが求められています。
55歳以上の割合が高く、高齢化が進んでいる

建設就業者のうち、55歳以上の割合は36.7%です。他産業における55歳以上の就業者割合は32.4%であり、建設業は他産業と比べても高齢化が進んでいる状況です。
高齢化が進むと、熟練技能者の退職により、現場で培われてきた技術やノウハウを次の世代へ引き継ぐことが難しくなる可能性があります。
特に建設業では、図面やマニュアルだけでは伝えきれない経験や判断力が求められる場面も多く、技能承継は重要な課題です。
今後は、若手の入職促進だけでなく、教育体制の整備や資格取得支援、ICTを活用した技術継承なども重要になるでしょう。
新規学卒者の入職者数は4万人前後で推移している

建設業への新規学卒者の入職者数は、2009年の2.9万人を底に、直近では4万人前後で推移しています。
一時期と比べると新卒入職者は回復傾向にありますが、業界全体の高齢化や就業者数の減少を踏まえると、今後も若手人材の確保は欠かせません。
新卒者や若手人材に建設業を選んでもらうためには、仕事のやりがいや社会貢献性を伝えるだけでなく、休日の取りやすさ、給与、教育制度、安全対策など、働く環境の改善を進めることが重要です。
女性就業率は上昇傾向にある

建設業は、他産業と比べると女性就業率が低い傾向にあります。しかし、2023年には女性就業率が18.2%となり、過去最高値を記録しています。
近年は、施工管理、設計、積算、CADオペレーター、事務、営業など、女性が活躍できる職種も広がっているのです。
また、現場環境の改善や更衣室・トイレの整備、柔軟な働き方の導入などに取り組む企業も増えています。
建設業が将来の担い手を確保していくためには、性別に関係なく働きやすい環境を整えることが重要です。
女性の活躍が進むことで、人材不足の解消だけでなく、多様な視点を取り入れた職場づくりにもつながるでしょう。
建設業が抱える主な課題
建設業では、就業者数の減少や高齢化に加え、長時間労働、休日取得、賃金、安全対策などの課題があります。
近年は改善に向けた取り組みが進んでいるものの、他産業と比べると依然として課題が残る部分もあります。
ここでは、建設業が抱える主な課題を解説します。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 担い手不足 | 就業者数の減少と高齢化により、将来的な人材不足が懸念されている |
| 技能承継 | 熟練技能者の経験やノウハウを若手へ引き継ぐ必要がある |
| 長時間労働 | 他産業と比べて労働時間が長い傾向にあり、是正が求められている |
| 週休2日 | 公共工事では取得が進む一方、民間工事では課題が残る |
| 賃金 | 処遇改善は進んでいるものの、他産業と比べるとさらなる改善が必要 |
| 労働災害 | 死亡災害は全産業の中で多く、墜落・転落対策が重要 |
将来的な担い手不足が懸念されている
建設業では、就業者数の減少と高齢化が同時に進んでいます。そのため、将来的に現場を支える人材が不足することが懸念されています。
建設業の仕事は、建物や道路をつくるだけではありません。
老朽化したインフラの補修、災害時の復旧、防災・減災対策など、地域の安全を守る役割も担っています。担い手が不足すれば、こうした社会基盤を維持する力が弱まる可能性があります。
今後は、若手や未経験者が安心して入職できる環境づくりに加え、働きながら技術や資格を身につけられる仕組みが重要になります。
技能承継が大きな課題になっている
建設業では、熟練技能者の経験や技術を次世代に引き継ぐことが重要です。しかし、高齢化が進むなかで、技能承継の時間が十分に確保できないケースもあります。
現場では、作業手順だけでなく、安全確認、段取り、天候や地形に応じた判断など、経験に基づく対応力が求められます。
こうした知識は短期間で身につくものではないため、若手を計画的に育成する体制が欠かせません。
企業側には、OJTや研修制度、資格取得支援、先輩社員によるフォロー体制などを整えることが求められます。
また、ICT施工やデジタル技術を活用し、熟練者の技術を見える化する取り組みも重要だといえるでしょう。
他産業と比べて労働時間が長い傾向にある
建設業は、他産業と比べて労働時間が長い傾向にあります。近年は労働時間数や出勤日数は減少傾向にあるものの、長時間労働の是正は今後も課題のひとつです。
建設現場では、天候、工期、資材の納入状況、発注者との調整など、さまざまな要因によって作業スケジュールが変動します。
そのため、工程管理が難しく、繁忙期には残業が発生しやすい場合があります。
ただし、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、業界全体で働き方を見直す動きが進んでいます。
今後は、適正な工期設定や業務効率化、ICTの活用などにより、長時間労働の削減がさらに求められるでしょう。
民間工事では週休2日の確保に課題が残る
建設業では、週休2日の確保に向けた取り組みが進められています。特に公共工事では、週休2日の取得が進んできています。
一方で、民間工事では週休2日の確保に課題が残っています。工期の制約や発注者の要望、現場ごとの事情などにより、休日を十分に確保しにくいケースがあるためです。
週休2日を実現するには、建設会社だけでなく、発注者側の理解も欠かせません。
無理のない工期を設定し、適正な人員配置を行うことで、働く人が安心して休める環境を整えることが重要です。
賃金水準のさらなる改善が求められている
建設業では、公共工事設計労務単価が13年連続で引き上げられており、処遇改善の動きが進んでいます。
一方で、他産業と比べると賃金はまだ低い状況にあり、さらなる賃上げが課題です。
人材を確保し、若手に長く働いてもらうためには、仕事内容に見合った給与水準や手当、資格取得による昇給制度などを整える必要があります。
建設業では、経験や資格が収入に反映されやすい職種もあります。
施工管理技士、建築士、電気工事士、技能士などの資格を取得することで、キャリアアップや収入アップを目指せる可能性があります。
労働災害の防止も重要な課題である

建設業では、死亡災害、死傷災害ともに減少傾向にあります。しかし、死亡災害は全産業の中で最も多く、事故の型としては墜落・転落が最も多い状況です。
厚生労働省のデータによると、建設業における労働災害の発生状況は以下のとおりです。
| 項目 | 令和5年 | 令和6年 | 前年比較 |
|---|---|---|---|
| 死亡災害 | 223人 | 232人 | +9人 |
| 墜落・転落による死亡災害 | 86人 | 77人 | ▲9人 |
| 休業4日以上の死傷災害 | 14,414人 | 13,849人 | ▲565人 |
| 墜落・転落による死傷災害 | 4,554人 | 4,351人 | ▲203人 |
死亡災害は前年より増加している一方、墜落・転落による死亡災害や休業4日以上の死傷災害は減少しています。
安全対策は改善傾向にあるものの、建設業では高所作業や重機作業など危険を伴う作業も多いため、引き続き労働災害の防止に向けた取り組みが必要です。
建設業の働き方は改善されつつある
建設業には長時間労働や休日取得の課題がありますが、近年は働き方を改善する動きも進んでいます。
時間外労働の上限規制の適用、週休2日の推進、処遇改善などにより、以前よりも働きやすい環境づくりが進められています。
ここでは、建設業の働き方に関する主な変化を解説します。
2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された
建設業では、2024年4月から時間外労働の上限規制の適用が開始されました。
これにより、建設業でも長時間労働を前提とした働き方を見直し、適正な労働時間を管理することが求められています。
現場の状況によっては残業が必要になることもありますが、過度な時間外労働を防ぐための仕組みづくりが進められています。
企業側には、工程管理の見直し、業務分担の適正化、書類作成の効率化、ICTツールの導入などが求められます。
働く側にとっても、労働時間が適切に管理されることは、心身の健康を守りながら長く働くうえで重要です。
労働時間と出勤日数は減少傾向にある
建設業は他産業と比べると労働時間が長く、出勤日数も多い傾向にあります。しかし、近年では労働時間数、出勤日数ともに減少傾向にあります。
また、1か月60時間以上の時間外労働を行う労働者の割合も減少傾向が見られます。
これは、長時間労働の是正に向けた取り組みが少しずつ進んでいることを示しています。
ただし、現場や会社によって働き方には差があります。建設業への就職・転職を考える際は、求人票だけでなく、実際の残業時間、休日取得状況、繁忙期の働き方なども確認することが大切です。
公共工事では週休2日の取得が進んでいる
建設業では、週休2日を確保した適正な工期設定が推進されています。特に公共工事では、週休2日の取得が進んできています。
週休2日が広がることで、働く人の心身の負担を軽減し、プライベートの時間も確保しやすくなります。
若手や女性を含め、幅広い人材に建設業を選んでもらううえでも、休日制度の整備は重要です。
一方で、民間工事では週休2日の確保に課題が残っています。業界全体で働き方を改善するには、発注者、元請け、下請けが連携し、無理のない工期や人員配置を考える必要があります。
公共工事設計労務単価は13年連続で引き上げられている
建設業で働く人の処遇改善に向けて、公共工事設計労務単価は13年連続で引き上げられています。
公共工事設計労務単価とは、公共工事の工事費を積算する際に用いられる労務費の基準です。
この単価が引き上げられることで、建設技能者の賃金改善につながることが期待されています。
ただし、建設業の賃金は他産業と比べるとまだ低い状況にあります。若手人材の確保や定着を進めるためには、単価引き上げの効果を現場で働く人の賃金に反映し、処遇改善を継続していくことが重要です。
建設業で働くメリット
建設業には課題もありますが、社会に必要とされる仕事であり、技術や資格を身につけながらキャリアを築ける魅力もあります。
人手不足が続くなかで、若手や未経験者を育成しようとする企業も増えています。
ここでは、建設業で働く主なメリットを紹介します。
社会インフラを支えるやりがいがある
建設業の大きな魅力は、社会インフラを支える仕事に関われることです。
道路、橋、トンネル、住宅、学校、病院、商業施設など、建設業が手がけるものは人々の暮らしに欠かせません。
また、災害時には復旧工事や防災・減災工事に関わることもあり、地域の安全を守る役割も担います。
自分が関わった建物や構造物が形として残り、多くの人に利用される点は、建設業ならではのやりがいといえるでしょう。
技術や資格を身につけてキャリアアップを目指せる
建設業では、経験を積みながら専門技術や資格を身につけることで、キャリアアップを目指せます。
たとえば、施工管理職であれば施工管理技士、電気工事に関わる仕事であれば電気工事士、建築設計に関わる仕事であれば建築士など、職種に応じた資格があります。
資格を取得することで、担当できる業務の幅が広がったり、給与や手当に反映されたりする可能性があります。
未経験からスタートしても、現場経験と資格取得を積み重ねることで、専門性の高い人材を目指せる点は建設業の魅力です。
人手不足のため、未経験から挑戦できる求人もある
建設業は人手不足が課題となっているため、未経験者を受け入れる求人もあります。
もちろん、専門的な仕事であるため、最初からすべてを任されるわけではありません。
入社後は、先輩社員のサポートを受けながら、現場での流れや安全ルール、道具の使い方などを少しずつ学んでいきます。
未経験から建設業に挑戦する場合は、教育制度や資格取得支援、安全研修が整っている会社を選ぶことが大切です。
育成体制がある企業であれば、経験がなくても段階的に成長しやすいでしょう。
女性や若手が活躍しやすい環境づくりが進んでいる
建設業では、女性や若手が活躍しやすい環境づくりも進められています。
女性就業率は2023年に18.2%と過去最高値を記録しており、施工管理、設計、積算、CAD、事務、営業など、さまざまな職種で女性が活躍しています。
また、現場設備の改善や働き方の見直しに取り組む企業も増えています。
若手人材についても、資格取得支援や研修制度を整え、長く働ける環境を用意する企業があります。
建設業は昔ながらのイメージを持たれがちですが、少しずつ働き方や職場環境が変化している業界です。
まとめ|建設業は課題がある一方で、働き方改善と将来性が期待される業界
建設業は、人手不足や高齢化、長時間労働などの課題を抱える一方、働き方改革や処遇改善が進み、今後も社会インフラを支える重要な仕事です。
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