建築業界で使われる「設計士」と「建築士」は、似た言葉ですが意味は同じではありません。設計士は設計業務に関わる人を広く指す呼称であり、建築士は法律に基づく国家資格を持つ専門職です。
担当できる業務や責任範囲、年収、キャリアの広がりにも違いがあります。
施工管理やCADオペレーターとして経験を積む中で、設計職や建築士を目指したいと考える人もいるでしょう。
本記事では、設計士と建築士の違いを仕事内容・資格・年収・キャリアパスの観点からわかりやすく解説します。
設計士と建築士の年収の違い
設計士と建築士では、資格の有無や担当できる業務範囲によって年収に差が出ることがあります。
ただし、実際の年収は勤務先、地域、経験年数、担当案件、役職によっても大きく変わります。
設計士・建築設計技術者の年収目安
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」によると、建築設計技術者の全国平均年収は679.1万円です。
この数値は、令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成されたものです。
| 項目 | 全国平均 |
|---|---|
| 年収 | 679.1万円 |
| 労働時間 | 166時間 |
| 平均年齢 | 43.4歳 |
| 求人賃金 | 月額33万円 |
| 有効求人倍率 | 2.85 |
同サイトでは、建築設計技術者の労働時間は全国平均で166時間、平均年齢は43.4歳とされています。
また、ハローワーク求人統計データでは、令和6年度の求人賃金は全国平均で月額33万円、有効求人倍率は2.85です。
ただし、job tagの統計データは、厚生労働省編職業分類の「建築設計技術者」などに対応する統計情報です。
必ずしも「設計士」や「建築士」だけの年収を表すものではなく、実際の年収は資格、経験、勤務先、案件規模、地域などによって異なります。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト job tag 建築設計技術者」
年収に影響する主な要素
設計職の年収は、資格の有無だけでなく、経験年数や担当する建物の規模、勤務先の種類、役職、地域によっても変わります。
設計補助やCAD中心の業務と、設計責任者として案件を担当する業務では、評価される範囲も異なります。
- ✓ 建築士資格の有無
- ✓ 実務経験や担当案件の規模
- ✓ 設計事務所・ゼネコン・ハウスメーカーなど勤務先の種類
- ✓ BIMやCADなどのスキル
- ✓ マネジメント経験や顧客対応力
資格がなくても設計業務に関わることはできますが、担当できる業務範囲には限りがあります。建築士資格を取得すると、設計や工事監理に関わる責任ある業務を任されやすくなり、待遇改善につながる可能性があります。
建築士は資格と実務経験で年収アップを目指しやすい
建築士は、資格の種類や担当する案件規模によって年収が変わります。一級建築士は大規模建築物や管理職、独立開業などの選択肢が広がりやすく、年収アップを目指しやすい資格です。
一方、二級建築士や木造建築士は、住宅設計や地域密着型の建築会社で活かされることが多く、経験や実績によって収入が変わります。資格を持っているだけでなく、実務で成果を出すことが重要です。
年収を高めたい場合は、設計実績、マネジメント経験、BIMスキル、法規対応力、顧客対応力なども磨きましょう。資格取得とあわせて実務経験を積み、任される業務の幅を広げることが大切です。
設計士と建築士の違いとは?
設計士と建築士の大きな違いは、国家資格の有無と法律上担当できる業務範囲です。
どちらも建物の設計に関わる仕事ですが、建築士は資格に基づいて設計や工事監理を担う立場にあります。まずは、両者の違いを整理しましょう。
設計士は設計業務に関わる人を指す一般的な呼称
設計士は、建築物の設計や図面作成に関わる人を指す一般的な呼び方です。
建築士のような国家資格名ではないため、会社や現場によって使われ方は異なります。設計事務所やハウスメーカーなどでは、建築士の指示のもとで図面作成やCAD入力、プラン修正を担当する人が「設計士」と呼ばれることがあります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、建築設計技術者の職業別名として「建築設計士」「建築構造設計技術者」「建築設備設計技術者」などが挙げられています。
建築設計技術者は、住宅や学校、オフィスビルなどの建築物について、調査や設計を行う職業です。
資格がなくても設計業務に関わることはできますが、建物の規模や用途によっては、建築士でなければ設計や工事監理を行えないケースがあります。
そのため、設計士として働く場合でも、建築士資格の有無によって担当できる業務の幅は変わります。
建築士は国家資格を持つ専門職
建築士は、建築士法に基づく国家資格です。建築物の設計や工事監理を行う専門職であり、一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類に分かれます。
施主の要望を形にするだけでなく、法規、安全性、構造、設備、施工性などを踏まえて建物を計画する役割を担います。
また、建築士は工事が設計図書どおりに進んでいるかを確認する工事監理も行います。
設計士が図面作成や設計補助など実務を支える立場であるのに対し、建築士は設計内容や工事監理に対して、専門的な責任を負う立場といえるでしょう。
「建築家」との違い
設計士や建築士と似た言葉に「建築家」があります。建築家は法律上の資格名ではなく、建築設計を行う専門家を表す呼称です。
デザイン性や作品性を重視する文脈で使われることもありますが、「建築家=国家資格」ではありません。
実務で建築物の設計や工事監理を行う場合には、建築士資格が必要になるケースがあります。
建築家は活動のスタンスや社会的な呼び方、建築士は法律に基づく資格名、設計士は設計業務に関わる人を指す一般的な呼び方として理解するとよいでしょう。
設計士と建築士の違いを比較
設計士と建築士の違いは、資格の有無だけではありません。担当できる業務、責任範囲、働く場所、キャリアの広がりにも違いがあります。ここでは、両者の違いを表で整理します。
| 比較項目 | 設計士 | 建築士 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 設計業務に関わる人の一般的な呼称 | 国家資格を持つ専門職 |
| 資格 | 必須ではない | 建築士資格が必要 |
| 主な業務 | 図面作成・設計補助など | 設計・工事監理など |
| 責任範囲 | 担当業務の範囲内 | 設計・監理に責任を負う |
| 活躍の場 | 設計事務所、ハウスメーカーなど | 設計事務所、ゼネコン、官公庁など |
建築設計技術者の勤務先は、建築士事務所、建設会社、ハウスメーカーなどの専門企業のほか、国土交通省、地方公共団体、民間企業の建築・施設管理部門など多方面にわたります。
設計士と建築士の違いを理解しておくと、今後のキャリアを考えやすくなります。設計補助やCADオペレーターとして経験を積み、建築士資格を取得して業務範囲を広げるルートもあります。
一方、建築士資格を持っている場合は、設計事務所やゼネコン、ハウスメーカーなどでより責任ある業務を任されやすくなります。現在の経験やスキルを踏まえて、どの職種・資格を目指すのかを考えることが大切です。
建築士資格の種類と担当できる建物の違い
建築士資格は、一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類に分かれます。資格によって担当できる建物の規模や構造が異なるため、目指すキャリアに合わせて理解しておくことが重要です。
一級建築士|大規模建築物まで幅広く担当できる
一級建築士は、建築士資格の中でも最も業務範囲が広い資格です。戸建て住宅だけでなく、マンション、商業施設、学校、病院、高層ビルなど、さまざまな建築物の設計・工事監理に関われます。
大規模案件や公共性の高い建築物を担当したい人にとって、一級建築士は大きな強みになります。
設計事務所やゼネコン、組織設計事務所などで活躍しやすく、将来的に独立を目指す場合にも役立つ資格です。
責任範囲が広い分、求められる知識や経験も高度になります。構造、設備、法規、施工性などを総合的に理解し、関係者と調整しながら設計を進める力が必要です。
二級建築士|住宅や小規模建築を中心に担当する
二級建築士は、主に戸建て住宅や小規模な建築物の設計・工事監理に関わる資格です。ハウスメーカーや工務店、地域密着型の設計事務所などで活かしやすい資格といえます。
住宅設計では、間取りや生活動線、収納、採光、断熱性など、暮らしに直結する提案力が求められます。施主の要望を丁寧に聞き取り、実現可能なプランに落とし込む力が重要です。
二級建築士として実務経験を積んだ後、一級建築士を目指す人もいます。住宅分野で専門性を高めたい人や、設計職として段階的にキャリアアップしたい人に向いている資格です。
木造建築士|木造住宅に特化した資格
木造建築士は、木造建築物に特化した資格です。木造住宅や小規模な木造建築に関する専門知識を活かせるため、住宅会社や地域の工務店で働きたい人に向いています。
日本では木造住宅の需要が高く、木造建築に詳しい人材が求められる場面があります。
構造や材料、耐震性、断熱性など、木造ならではの知識を身につけることで、住宅分野で強みを発揮できます。
対応できる範囲は一級建築士や二級建築士より限定されますが、木造住宅に特化して働きたい人にとっては実務に直結しやすい資格です。
以下、HTMLタグを挿入し、H3本文は250字前後に圧縮して整えました。年収目安の箇所は表にしています。
設計士と建築士の仕事内容の違い
設計士と建築士は、どちらも建築設計に関わる仕事ですが、担当する範囲や責任の重さが異なります。ここでは、それぞれの仕事内容と、施工管理との違いを整理します。
設計士の仕事内容
設計士は、建物の計画を形にしていく実務を支える仕事です。主に、図面作成、設計補助、CAD入力、プラン修正、資料作成などを担当します。
未経験から設計職を目指す場合は、設計補助やCADオペレーターとして経験を積むケースもあります。
図面の読み方や建築用語、CAD操作、設計の進め方を実務で学びながら、将来的に建築士資格を目指す人もいます。
資格がなくても設計業務に関わることはできますが、担当できる範囲は勤務先や保有資格によって異なります。
建築士の仕事内容
建築士は、建築物の設計や工事監理を担う専門職です。施主の要望をもとに設計プランを作成し、建築基準法などの法令、安全性、構造、設備、施工性を踏まえて建物を具体化します。
厚生労働省のjob tagでも、建築物の建設は建築基準法などの法的規制を受けるため、関連する手続きを行うと説明されています。
また、工事中には、設計図どおりに施工されているかを確認する工事監理も行います。
建築士は、デザインの提案だけでなく、建物の安全性や使いやすさ、法令への適合性を確認しながら計画を進める立場です。設計内容に対して専門的な責任を負う点が、設計士との大きな違いです。
施工管理との違い
施工管理は、設計図をもとに工事を進める現場側の仕事です。工程管理、品質管理、安全管理、原価管理などを担当し、職人や協力会社と調整しながら、現場が予定どおり進むように管理します。
一方、設計士や建築士は、建物の計画や図面作成、設計意図の整理に関わる仕事です。
施工管理が「図面をもとに建物をつくる仕事」であるのに対し、設計士や建築士は「建物をどのようにつくるかを計画する仕事」といえます。
設計士から建築士を目指すキャリアパス
設計士として実務経験を積みながら、建築士資格を取得してキャリアアップする人は少なくありません。
資格取得によって、担当できる業務や転職先の選択肢が広がります。
設計補助・CADオペレーターから経験を積む
未経験から設計職を目指す場合は、設計補助やCADオペレーターとして実務経験を積む方法があります。
図面の読み方やCAD操作、建築用語、設計の進め方を学びながら、設計業務の基礎を身につけられます。
厚生労働省のjob tagでは、建築設計技術者として就業するには、高校や専門学校、大学の建築系学科で、構造力学、建築材料、関係法令などを学んでから入職するのが一般的とされています。
一方で、実務では入職後にスキルを身につけるケースもあります。図面修正や資料作成、申請書類の補助などを通じて設計の流れを理解できるため、建築士試験の学習にも役立つでしょう。
二級建築士を取得して住宅設計に関わる
住宅分野でキャリアを築きたい場合は、二級建築士の取得がひとつの目標になります。
ハウスメーカーや工務店、設計事務所などで住宅設計に携わりながら、実務経験を積みやすい資格です。
二級建築士を取得すると、住宅や小規模建築の設計・工事監理に関わりやすくなります。
設計補助から一歩進み、施主との打ち合わせやプラン提案など、より主体的な業務を任される可能性もあります。
一級建築士を取得して業務範囲を広げる
一級建築士を取得すると、大規模建築物や公共性の高い建物にも関わりやすくなります。
設計職として専門性を高めたい人や、将来的に独立を目指したい人にとって重要な資格です。
一級建築士は取得難易度が高い資格ですが、その分キャリアの選択肢も広がります。
設計事務所やゼネコンで大規模案件を担当するほか、管理職としてチームをまとめる道や、自分の設計事務所を開く道もあります。
厚生労働省のjob tagでも、建築設計技術者として経験を積み、建築士や技術士、建築施工管理技士などの関連資格を取得して、設計コンサルタント業などとして独立・開業する道があるとされています。
施工管理から設計職へ転職する道もある
施工管理の経験は、設計職へのキャリアチェンジでも強みになります。現場の流れや施工方法を理解しているため、実現性のある設計を考えやすく、施工性を踏まえた提案ができる点が評価されます。
施工管理から設計職へ転職する場合は、CADやBIMの操作スキル、建築法規、設計図書の作成スキルを補う必要があります。現場経験を、設計業務でどのように活かせるかを伝えることが大切です。
たとえば、図面確認の経験、職人や協力会社との調整経験、納まりへの理解、施工性を踏まえた改善提案などは、設計職でもアピールしやすい要素です。現場を知っているからこそ、机上の計画だけで終わらない提案ができるでしょう。
土木設計を目指す場合は建築設計との違いを理解する
道路や橋、鉄道、ダム、トンネルなどの設計に関わりたい場合は、建築設計ではなく土木設計技術者の領域になります。建築分野と土木分野では、対象物や必要な知識が異なります。
厚生労働省のjob tagでは、土木設計技術者は土木工事を進めるにあたって、調査・計画・設計を行う職業とされています。転職時には、建築設計を目指すのか、土木設計を目指すのかを明確にしましょう。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト job tag 土木設計技術者」
設計士・建築士に求められるスキル
設計士・建築士として活躍するには、建築の専門知識だけでなく、デジタルツールを扱う力やコミュニケーション力も必要です。
未経験から目指す場合も、必要なスキルを段階的に身につけることが大切です。
| スキル | 内容 | 活かせる場面 |
|---|---|---|
| CAD・BIMスキル | 図面作成や3Dモデルによる設計情報の管理を行う | 図面作成、設計補助、BIM活用案件 |
| 建築法規の知識 | 建築基準法などを理解する | 法令確認、建築確認申請、設計条件の整理 |
| 構造・材料の知識 | 建物の安全性や材料の特徴を理解する | 構造計画、設計内容の検討 |
| ヒアリング力 | 施主の要望や課題を正確に聞き取る | 打ち合わせ、要件整理 |
| 提案力・説明力 | 設計内容をわかりやすく伝える | 施主提案、社内調整 |
CAD・BIMスキル
設計業務では、CADを使った図面作成が基本になります。平面図、立面図、断面図、詳細図などを正確に作成・修正する力は、設計職として働くうえで欠かせません。
厚生労働省のjob tagでも、建築設計技術者がよく使う道具・機材・情報技術として、CADなどの設計用ソフトやパソコンが挙げられています。
さらに、大手・準大手のゼネコンや設計事務所ではBIMの導入が進み、設計から施工、メンテナンスまでの情報管理に活用されています。
設計補助からキャリアを始める場合も、CADやBIMのスキルを身につけておくと転職時のアピール材料になります。
建築法規・構造に関する知識
建物は、デザインだけでなく安全性や法令への適合が求められます。建築基準法、構造、耐震性、防火、設備などの基礎知識を身につけることで、設計内容の妥当性を判断しやすくなります。
厚生労働省のjob tagでは、一定規模以上の建物について、基本設計計画に基づいて構造計算を行い、建築法規に合致するかどうか、強度などを確認する業務が示されています。
特に建築士を目指す場合は、法規や構造の理解が欠かせません。施主の要望を形にするだけでなく、安全で使いやすい建物にするための知識が求められます。
提案力・ヒアリング力
設計職では、施主の要望を正確に理解し、図面やパースを使ってわかりやすく提案する力も必要です。要望をそのまま形にするのではなく、予算や施工性、法令上の制限を踏まえて現実的な提案を行う力が求められます。
建築設計技術者のタスクとして、施主との打ち合わせや建築物の要件調査が示されています。また、施主と相談のうえ、建造物の機能的・空間的な諸要件を定めることも重要な業務とされています。
建築プロジェクトでは、施主、施工会社、設備担当、行政担当者など多くの関係者とやり取りします。相手の意図をくみ取り、調整しながら進めるコミュニケーション力も重要です。
設計士・建築士の将来性
建築設計の仕事は、住宅やオフィスビルなどの新築だけでなく、既存建物の維持管理、改修、耐震診断、リノベーションなどにも広がっています。
建物を長く安全に使うための需要があるため、設計職の役割は今後も重要です。
建築設計技術者は、建築物の耐震診断や改修、文化財の保存などの分野でも活躍しており、今後も建築物の維持管理に関する業務が拡大していくと予想されています。
まとめ|設計士と建築士の違いを理解してキャリアを考えよう
設計士と建築士の違いは、国家資格の有無と担当できる業務範囲にあります。設計士は設計業務に関わる人を広く指す呼称であり、建築士は法律に基づく国家資格を持つ専門職です。
建築設計技術者は、建築物の用途や規模、デザイン、構造、設備、予算、工期、立地条件、法的条件などを調査し、設計図を作成する仕事です。また、工事中には設計図どおりに施工されているかを確認する工事監理の業務も行います。
設計補助やCADオペレーターから経験を積み、二級建築士や一級建築士を取得することで、担当できる仕事や転職先の選択肢は広がります。
施工管理経験者であれば、現場を理解している強みを設計職でも活かせるでしょう。
設計職や建築士への転職を考えている方は、自分の経験・資格・スキルを整理し、どのキャリアパスが合っているかを検討してみてください。