建設コンサルタントは公共インフラ整備の建設において、施工以外のすべての工程に関わる仕事です。景気の影響を受け、建設コンサルタントの需要や市場規模は変動します。建設コンサルタント業界で働くうえで、業界の現状や今後の動向を把握しておくことが望ましいでしょう。
この記事では、建設コンサルタント業界における需要や市場規模、業界を取り巻く課題、業界の将来性について解説していきます。
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■建設コンサルタント業界の現状と市場規模
建設コンサルタントの役割を踏まえ、業界の現状や需要、市場規模について解説します。
建設コンサルタントの役割とは?
建設コンサルタントの役割は、公共インフラ建設における事前調査や計画立案、設計、施工管理などを担うことです。
橋や道路、空港、ダムや上下水道などの公共性の高いインフラ整備は、原則的に税金を使うことから「社会資本」と呼ばれます。社会資本を整備するにあたり、公平性と透明性を保つため、設計者と施工者を別にする「設計・施工分離の原則」に従わなければなりません。
社会資本のインフラ整備は、設計や施工管理を建設コンサルタントが担い、施工はゼネコンなどの建設会社が行なう仕組みです。また、公共事業に携わるため、建設コンサルタントは国土交通省の登録が必要になります。
建設コンサルタント業界の現状と需要
建設コンサルタント業界とは、建設コンサルタントを主力とする企業が属する市場、マーケットのことです。
建設コンサルタントは公共事業に携わるため、官公庁や地方自治体の動向に影響を大きく受けます。1990年代後半は公共事業投資がピークに達しましたが、ハコモノ行政への批判から市場は縮小傾向に入ります。
しかし、2011年に東日本大震災が発生したことを機に、震災にともなう復興、防災の需要が一時的に増加しました。その後、2015年頃には落ち着きましたが、アジアなどの新興諸国におけるインフラ整備への需要の高まりが、建設コンサルタント業界の需要を支えています。
建設コンサルタント業界の市場規模
建設コンサルタント業界の市場規模は0.5兆円と、全体的に見て業界規模はあまり大きいとはいえません。
先に述べたハコモノ行政のあおりで市場規模が減少し、2008年の年間投資額はピーク時から半減するという厳しい状況にありました。しかし、2011年の東日本大震災、2012年の政権交代による円安、株価の上昇により、建設コンサルタント業界の市場規模は現在まで堅調に推移しています。
公共工事はオリンピックや万博などの関係で、2025年頃までは需要が続く見通しです。しかし、大きなイベントの終了以降はインフラ整備の投資が少なくなるため、従来と同じ仕事では生き残れなくなる可能性もあるでしょう。
建設コンサルタント業界における課題
建設コンサルタント業界を取り巻く、課題は次のものが挙げられます。
- コンサルタントの高齢化
- 労働環境の改善・人材の定着率向上
コンサルタントの高齢化
建設コンサルタント業界の平均年齢は40代であり、年齢層が厚い世代は40代、50代というデータがあります。その一方で、20代の若手が極端に不足しており、高齢化が進んでいることが目下の課題です。20代の層が薄い理由には、不況の時期に新卒採用を減らしたことが関係していると考えられます。
ただし、高齢化の理由は新卒採用の減少だけでなく、コンサルタント業が「激務」という点も影響しています。残業や休日出勤が多いうえに、一人前と認められるには5年~10年程度かかることが一般的です。上司の指示で動く時期が続く、20代は特につらい時期といわれています。
建設コンサルタント業を含めた建設業界は、深夜残業や休日出勤が多くなることが一般的です。近年の若者の働き方の意識は、仕事よりプライベートを重視したい傾向が強くなっています。建設コンサルタント業界の労働の長さ、休日の少なさは、若手社員が定着しにくい大きな要因といえるでしょう。
労働環境の改善・人材の定着率向上
建設コンサルタント業界の高齢化を食い止めるには、若手社員の定着率を上げる必要があります。ノー残業デーやパソコンの強制的なシャットダウンといった、残業時間の短縮対策をとる企業もあるようです。また、若手社員は結婚などのライフイベントが多い年代のため、変化に柔軟に対応できる働き方が可能な労働環境も求められます。
建設コンサルタント業界の官公庁依存、長時間労働などを見直し、若手社員が長く働きたいと思える業界を目指す有志組織が発足しています。若手社員が主体となって発足した「若手技術者の会」では、業界の今後を議論し、明るい将来を思い描くことのできる業界を目指しています。こうした活動により、若手社員の意見を反映した労働環境になるかもしれません。
建設コンサルタントの将来性と転職先
建設コンサルタントの業務における将来性と併せて、知識やスキルをi活かせる転職先も紹介します。
建設コンサルタントは生活を支えている
建設コンサルタントの業務は、生活に欠かせないインフラ設備にすべて関わっています。新規のインフラ設備の建設需要は縮小傾向にありますが、老朽化によるリニューアル、災害時の対応など今後も活躍の場はたくさんあります。建設コンサルタントは長く働き続けられるため、将来性は明るいといえるでしょう。
業務経験を生かして専門的な職種に転職する
建設コンサルタントの業務は、計画・調査・設計・管理に分類されます。
計画業務は、工事そのものの計画や立案を検討し、具体的な予算や工期に落とし込む業務です。調査業務では、工事予定地に加えて周辺の地盤や土壌汚染の状況、騒音や振動など周辺環境への影響を調査します。
設計業務は文字どおりに図面を作成する役割で、建設コンサルタント自身が設計する場合もあるようです。管理業務は完成後のインフラ設備の稼働状況、メンテナンス、修繕などを提案する役割を持ちます。このように、建設コンサルタントは施工以外のすべての工程に関わるため、施工管理と同様の役割も果たしているといえます。
こうした建設コンサルタントの業務経験を生かし、設計や施工管理などの専門的な職種に転職することも可能です。施工管理は人手不足が特に深刻な状況のため、長時間労働の是正や週休2日制の導入といった働き方改革も浸透しつつあります。
建設コンサルタントの経験がある方は、施工管理の分野でも高く評価されるはずです。今後さらに働きやすい環境になる可能性がある施工管理で、これまでの経験やスキルを発揮するのも将来性を高めることにつながるでしょう。
まとめ
建設コンサルタントは、社会資本である公共インフラ整備において、施工以外に携わります。建設コンサルタントの市場規模は、震災復興や防災などの災害対策、海外のインフラ整備の需要、円安・株価上昇などで堅調を維持している状況です。
しかし、建設コンサルタント業界は、コンサルタントの高齢化、労働環境の改善という課題を抱えています。特に不足している20代の若手社員の定着率を上げるには、長時間労働や深夜労働を減らす取り組みが必要です。
とはいえ、私たちの生活を支える公共インフラ整備が、今後なくなることはあり得ません。建設コンサルタントは長く働けるという点で、将来性が明るいといえるでしょう。建設コンサルタントからの転職を考える場合、施工以外のすべてに携わるという経験が、設計や施工管理の業務で役立ちます。
より専門的な設計や施工管理として転職を検討する方は、ベスキャリ建設のキャリアアドバイザーに一度ご相談ください。